貯蓄が大切であることは言うまでもありません。しかし、「目的のない貯蓄」には注意が必要です。その理由について、2,000万円の貯金があったにもかかわらず「老後破産危機」に陥ってしまった佐藤さん(仮名)の事例をもとに、詳しくみていきましょう。牧野FP事務所合同会社の牧野寿和CFPが解説します。
情けない…年金月15万円・貯金2,000万円、趣味は散歩と図書館通いの68歳男性「まさかの大散財」で老後破産危機→時給1,100円のコンビニバイト生活も“なぜか笑顔”のワケ【FPが解説】
SNSで知り合った“仲間”から届いた「1通のDM」
こうしたなか、少し前にSNSで知り合ったYさんからDM(ダイレクトメッセージ)が届きました。
「投資に興味はありませんか? よかったら、僕が信頼している投資顧問を紹介したいのですが」
と書かれています。
警戒心はありましたが「いつもリアクションをくれる優しいYさんが言うなら」と、いったん会ってみることに。
冷静で知的な語り口に、Yさんと投資顧問のことを信じることにした佐藤さん。
「どうせしばらくは使う予定がないから」と、思い切って定期預金を解約。その一部の500万円を預けることにしました。
その翌月、預けた1割の50万円が振り込まれました。
「おいおい、本当に振り込まれたじゃないか! これならすぐに大金持ちだ」
すっかり信じ切った佐藤さんは、思い切って1,000万円を“追加投資”したそうです。
しかしその後、いくら待っても“運用利益”が振り込まれることはありませんでした。Yさんや投資顧問を責めようにも、すでにアカウントが消えていたため連絡する手段がありません。
困り果てた佐藤さんは警察に相談。しかし預けたお金が戻ってくることはなく、いきなり老後破産の危機に瀕してしまいました。
引っかかるシニア急増中…「SNS型投資詐欺」の被害状況
近年、SNSを使った詐欺の被害が急増しています。警察庁がまとめた「SNS型投資・SNS型ロマンス詐欺の被害発⽣状況」によると、最新の被害状況は[図表]のとおりです。
令和6(2024)年1月~6月の半年間において、被害者総数は3,570人。年齢別にみると、男性は50代以上が76.1%、女性は50代以上が73.4%を占めています。
また警察庁は
「インターネットを通じた投資はお金を振り込む前に5つのポイントをチェック。1つでも当てはまったら迷わず警察に相談を」
と呼びかけています。
【振り込む前に確認する5つのポイント】
1.投資先が実在しているか・国の登録業者か確認(参考:金融庁HP「無登録業者との取引は要注意!! ~無登録業者との取引は高リスク~」)
2.「必ず儲かる」「確実」「あなただけ」といった文言に注意する
3.投資を勧めている「著名人」がなりすましではないか確認する
4.投資に関係する「暗号資産」や「投資アプリ」等が実在するか確認する
5.振込先の口座に不審な点がないか確認する
