(※写真はイメージです/PIXTA)

「人生100年時代」と呼ばれる現代、老後の資金計画は多くの人にとって大きな関心事。しかし、必要な金額はライフスタイルや目的によって大きく異なります。本連載では、老後に必要な資金を目的別に分かりやすく解説し、不安の解消と実現可能な未来設計のヒントを提供します。第6回目は、家族への贈与や相続など、老後資金の「次」について考えます。

住宅購入のタイミングは贈与しやすい

連載の最後では、老後の家族との関係や相続など、老後資金の「次」の段階について考えてみたいと思います。

 

まず、子どもや孫への金銭的な支援を考えた時、どの程度の資金が必要なのでしょうか。例えばよくあるのが、孫の学習用品や塾代などを援助したい、というケース。そのような場合は、金額はさまざまなので、具体的に「どのぐらいの備えが必要か」と考えるより、余力のある範囲内で援助していけばいいでしょう。

 

そして金額的に学習用品や塾代などより大きなインパクトがあるのは、住宅を購入する際の減税効果です。例えば、子どもが家を買う際に血縁関係者から資金譲渡があった場合、非課税となる部分が発生します。通常の暦年贈与だと110万円以上の贈与には贈与税がかかりますが、家を買うときにお金を贈与する場合は非課税枠が大きく設定されているので、そのような形での支援が可能なのは大きなメリットと言えます。このように、子どもが住宅を買われるときは非常に贈与がしやすいタイミングでもあるので、こうした機会をしっかり活かすことが重要です。

 

ただ、ここで注意が必要なのは、あまり早い段階でお金を移してしまうと、ご自身の老後のときに子どもからお金を戻してもらわなければいけなくなるケースが発生する可能性もあることです。そうなってしまってはお互いに意味がないので、そこについては節度を持って考えていただければと思います。

 

家の相続で気をつけるべきポイントは?

次に、家の「相続」についても考えてみましょう。

 

例えば子どもが家を相続する場合、仮に1億円の物件を相続するとなるとその中の6000万円、7000万円に対して相続税がかかりますが、その税金を払えなければ不動産を売却するしかないという状態になってしまうので、そこに対する備えは必要です。

 

よくあるのが、親が時価3億円や5億円のビルを持っているケース。このビルを相続する場合、当然相続税を計算して支払わなければなりませんが、親がどんなに財産を持っていても亡くなった時点で凍結されてしまうので、そこから相続税を払うことは極めて困難になります。そうした事態を防ぐための対策としては、暦年贈与の形で相続税に当たる部分に関しては事前贈与を受けておくか、または生命保険の形で備えておくかの2択になります。スムーズに相続を進めるためにも、今の時価総額ベースで相続の金額をある程度概算してプランニングしておくことが重要といえるでしょう。

 

事前に意思を明確化することがトラブル防止に

相続については、トラブルを未然に防止するためにも、事前にどのような準備をしておくかは考える必要があります。準備のひとつは、事前に自分の意思を明確化しておくこと。これについては司法書士マターにはなりますが、例えば「きちんと遺言を作成しておく」など、自分の意思を明確にしておくことはトラブルを回避するうえで有効です。

 

遺言書の作成以外に、自身の資産をまとめておくことも、“終活”としてすべきことのひとつです。

これもよくあるケースですが、親が亡くなったあと、子どもらが知らない口座が後から出てきた、ということは少なくありません。そのような後のトラブルを防ぎ、スムーズに相続を進めるためにも、誰かに教えておく必要はありませんが事前に資産をきちんとひとまとめに管理しておくことは大事だと思います。

 

特に、昔は銀行に行くと新しい口座をどんどん作らされるような風潮があり、その結果としていろいろな銀行に何十万円、何百万円ずつ資産があったり、本人自身もそのことを忘れていたり……というケースはよくあるので、そういう部分をしっかりと管理しておくことは必要だと思います。今はマイナンバーで紐づくようになってきているので、少なくとも紐づけられるものに関してはたどりやすいとは思いますが、マイナンバー以前のものが出てくるケースもまだゼロではありませんので、注意は必要です。

 

また、もうひとつ注意したいのは、相続させるものについて。例えば相続するタイミングで、有価証券の形で相続する形になると少々苦労すると思うので、そこもある程度整理した状態で相続させるのが望ましいと思います。

 

資産形成の期間は長いほどいい

これまで6回の連載を通じて、老後の資金計画についてさまざまな角度からお話してきましたが、私から最後にお伝えしておきたいのは、「資産形成の期間は、長ければ長いほどいい」ということです。それを踏まえて、もし資産形成したい、資産形成を考えてみたい、と少しでも興味を持っていただけたなら、まずは資産運用について考えてみて、セミナーに参加したり、専門家に遺産に関する細かい話を聞いたり……と行動してみるといいのではないでしょうか。そして、そこで得た知識をしっかり活かしていただければ、老後の資産形成もスムーズに行えるのではないかと思います。