戸建てかマンションかはライフスタイル次第
老後の住まいで考えるべきこととして、「戸建て」と「マンション」のどちらを選択すべきか、という問題がありますが、基本的には「ライフスタイル次第」になると思います。
例えば、戸建ては駅前にはありませんので、「どうしても駅近に住みたい」と駅の近くに住むことを重視するのであれば、必然的に戸建てという選択肢はなくなります。つまり、まず立地について自身の希望を明確にしておく必要があるわけです。
判断のポイントは将来の資産価値
そのような立地へのこだわりがない場合、戸建てがいいのか、マンションがいいのか。それを判断するうえで押さえておきたい重要なポイントは、「将来の資産価値」です。
例えばマンションの場合は、土地の権利は各戸で分配される形なので、いわゆる「土地の価値」はあまりないことになっています。ですから、将来そのマンションの部屋を子どもに相続させることになったとしても、資産価値としてはそれほど高くはならないことも考えられます。また、マンションは修繕積立金などの支出を自分でコントロールすることができません。基本的には管理組合次第という形になってしまうので、そうした面では戸建てのほうが融通が利きます。
さらに戸建ての場合は、相続させずに解体するつもりなら、修繕の必要もありません。自身の余命を考慮して、修繕せずにそのままの状態を維持するという選択肢もあるわけです。逆に相続させることが前提ならば、状況に応じて適切に修繕するという方法を選ぶこともできます。そのようなコントロールがしやすいのは戸建てのメリットといえるでしょう。
住み替えはマンションが有利なケースも
その反面、戸建ては、特に新築で注文住宅を作った場合は自分仕様になっているため、売却しづらいというデメリットもあります。また、例えば子どもがいて、その子の大学進学のタイミングで住み替えようと考えているならば、基本的にはマンションの方がトータルコストは低くなる傾向があります。20年未満で住み替える前提であれば、マンションを購入したほうが有利に働くケースも多いでしょう。
ただ、子どもの大学進学以降も同じマンションに住み続けるつもりであれば、先ほどお話したように修繕積立金などのコストが上がる可能性は高いので、そういった場合は資産として考えるうえでは戸建ての方が有利なことが多いです。そのような点も踏まえて、住み替えするか売却するかを判断するのが良いと思います。
住み替えはローン前提で考えるべきではない
では、老後にそれまで住んでいた住居を売却して住み替える選択をした場合、どの程度の資金を想定しておけばいいのでしょうか。
大きな家から狭い家に住み替えるケースでは、現在の不動産事情で考えると、おそらく追加コストは発生しないことが多いと思います。例えば3LDK、4LDKの家から2DKに住み替える場合は、中古で売却して新築で購入したとしても費用負担は発生しないケースがほとんどです。もちろんタイミングにもよりますが、老後のスリム化する住み替えについていえば、追加で費用が発生する可能性は低いと考えていいのではないでしょうか。ただ、あくまで市場の状況次第ですので、どのような状況にも対応できるように最低でも1,000万円から2,000万円程度を備えておくことをお勧めします。
ひとつ気をつけたいのは、住み替えを検討する際は、基本的にはローン前提で考えるべきではないということです。なぜなら、老後の住み替えのタイミングでは、ローンを組むことが可能な期間はおそらく残っていないと思われるからです。例えば、仮に30歳で第1子、35歳で第2子が生まれた場合、第2子が親元を離れるときには55歳になっています。そのタイミングで住み替えを考えても、おそらくローンは組めて10年、20年でしょう。80歳までローンを組むことは可能ではありますが、あまり現実的ではありません。ですから、基本的にはローン前提ではなく、住み替えるまでに一括で払える準備を進めておくことが望ましいと思います。
賃貸のメリット、デメリットは?
最後に、持ち家ではなく賃貸住宅に住むケースについても考えてみたいと思います。まず老後の賃貸生活のデメリットは、やはり高齢になってからは部屋を借りづらいという点です。また、保証人の確保なども懸念事項として挙げられるでしょう。都合に合わせて居住地を転々としやすいというメリットもあるので、一概に賃貸を否定することはできませんが、不動産を買うか借りるかの違いは、同じ家賃を支払って最終的に「資産が残るか残らないか」という点にあります。相続する相手がいない場合は考える必要はないかもしれませんが、もし資産を譲渡したい相手がいるならば、やはり資産が残る形で計画を立てるほうがいいのではないかと思います。