会社員として堅実に働き続け、念願のマイホームを手に入れ、子どもたちの教育も無事に終えた坂本さん(仮名・62歳)は想定通りのキャリアを歩んできたつもりでした。しかし、定年を迎えた今、思いがけない住宅ローンの負担に直面し、老後の暮らしが揺らいでいます。これから住宅購入を考えている人も、すでにローンを抱えている人にとっても、決して他人事ではない「定年後の住宅ローン問題」について、CFPの伊藤寛子氏が解説します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
年収700万円・41歳会社員が都内4,000万円・夢のマイホームを購入。キャリアは順調、返済計画に無理はないはずだったが…20年後〈住宅ローン破綻危機〉に陥った「よもやの大誤算」【CFPの助言】
坂本さんの最終決断…長期的な計画で安心の住まいと暮らしを手に入れる
マンションを手放すことも検討した坂本さんですが、今後の収支がどうなるかを知るために、FPの元へ相談に行きました。
マンションを売却して住宅ローンの負担がなくなったとしても、売却後の賃貸住まいでかかり続ける家賃を考えると、老後の収支が厳しいことに変わりはありません。さらに高齢になった際に借りられなくなるリスクもあることから、マイホームに住み続ける選択をしました。
そのため、まずは妻が家計の足しになるようパートでできる仕事を探し始め、年金受給開始までは月8万円の収入を得ることを目指します。また、月約23万円かかっていた生活費も2割程度減らせるよう見直しを行い、月々の収支がプラスになるよう改善します。
65歳で完全にリタイアするつもりでいた坂本さんですが、健康で働けるうちは仕事を続け、例えば月8万円程度の収入、妻は月6万円程度の収入が得られれば、夫婦の年金月25万円を合わせて約40万円の収入を想定することができます。
貯蓄を切り崩していた状況から、貯めていけるようになるため、70歳時点で残りの住宅ローンを完済、リタイアすることを目標にしました。
専門家に相談し、ライフプランを作成して見通しが持てたことで、坂本さん一家は安心してマイホームで生活を続けることができています。
今回のケースでは、マイホームで平和な老後を迎えるはずが、長期的な視点を持たずにその時々の暮らしを優先してきたことで、苦しい思いをすることになってしまいました。
「住宅を買ったら終わり」ではなく、「買ったあとも無理なく返し続けていけるか」の見通しを持つため、住宅ローンの返済計画は長期的な視点で考え、安心できる住まいと暮らしを手に入れましょう。
伊藤 寛子
ファイナンシャル・プランナー