収入減に次ぐ収入減で老後破綻の可能性も……

坂本さんが勤める会社では、55歳で役職定年となります。坂本さんも50代で年収1,000万円とピークを迎えましたが、55歳になると管理職手当などがカットされ、年収は3割程下がり、700万円になりました。

役職定年という制度自体は坂本さんも知っていました。しかし、具体的に意識したのは50代を過ぎてから。住宅ローンを組んだときには、そこまで考えが及んでいなかったのです。

上の子は社会人になりましたが、下の子の大学費用と収入の低下で、収支に余裕がない状況が続きました。その後、晴れて下の子も社会人となり「これから老後のために貯蓄をしていこうと意識を切り替えたときには、定年まであと2年ほど。十分な時間がないまま60歳で定年を迎えることになりました。

定年後も継続雇用で働き続けることはできましたが、給与は定年時の6割まで下がります。坂本さんの年収は約420万円、手取り額は約320万円になりました。

このように、55歳以降、坂本さんの収入は右肩下がりに減っていってしまったのです。一方で、住宅ローンはまだあと15年、約2,000万円の返済残高が残っています。

月々12万円、年間144万円の返済に加えて、マンションの管理費なども年間30万円ほど必要で、少なくとも1年に174万円は住居費だけで消えていきます。残りの月々に使える金額は約12万円と、夫婦の生活費を賄いきれません。

不足分を賄うために、退職金とわずかな貯蓄を切り崩していきましたが、このままいけば老後資金が底をついてしまうこと、さらに65歳から年金生活に突入すると住宅ローンの返済自体が難しくなることにようやく気がついたのです。

老後破綻の可能性もあると考えた坂本さん夫妻は、夢のマイホームだったマンションを手放すことも視野に入れ始めました……。