年金収入だけではゆとりのある生活が難しいいま、老後への備えは必須です。ただ、定年直前に焦って準備を始めると、取り返しのつかない事態に陥ってしまうことも……。貯金と退職金で「老後は安泰」だと信じていたサラリーマンの事例をみていきましょう。神戸・辻本FP合同会社代表の辻本剛士氏が解説します。※プライバシー保護のため、登場人物の情報は一部変更しています。
悔しい…〈年収750万円・貯金2,000万円〉定年直前の59歳サラリーマン、同僚の“余計なお世話”が招いた大惨事。たった半年で貯金の半分を失ったトホホな理由【FPが警告】
この金額なら失敗しても諦めがつく…初めての先物取引の結果は
そして陽介さんは、Aさんが勧める銘柄に100万円ずつ、合計300万円を投資することに。300万円にした理由は、「2,000万円の貯金のうち、300万円程度なら失敗しても諦めがつく」と考えたからです。
選んだ銘柄は「日経225先物」と「NYダウ先物」、「東証REIT指数先物」の3つ。Aさんが言うように、すべて買いで入ることにしました。
こうして、陽介さんは「先物取引」の世界に足を踏み入れることとなったのです。
もう30万円も増えた!
陽介さんが先物取引を始めたちょうどその頃、世界の株式市場は新型コロナウイルスによるパンデミックの影響から立ち直り、右肩上がりの相場が続いていました。陽介さんが購入した日経225、ダウ、東証REIT指数はいずれも順調に値上がりし、気づけば含み益は30万円に。
(こんなにも簡単に増えるのか……)
陽介さんは、驚きを隠せません。スマートフォンの取引画面を何度も確認し、嬉しくなった陽介さんはAさんに報告しました。
陽介さん「A! 聞いてくれよ。もう30万円も増えた!」
Aさん「おう、よかったな! でも30万円か。俺は150万円の利確だよ」
陽介さん「150万円!?」
Aさん「谷口、お前は投資額が少なすぎるんだよ。先物取引の魅力はレバレッジを効かせて自己資金以上の取引ができるところだぞ。もっと大きく張れば利益もうんと増える」
その日の夜、陽介さんが先物取引について調べていると、あるネット記事が目に入りました。内容は「先物取引で億り人になった」という人物のインタビューのようです。
(たまたまじゃないのか……?)
他にもいくつか記事を読んでみましたが、億り人になった人の共通点は「リスクを取ったこと」のようでした。
(もっと投資額を上げれば、老後の生活がさらに豊かになるかも)
そんな考えが陽介さんの頭をよぎります。まだ慎重な気持ちは残っているものの、陽介さんのなかで「投資額を増やす」という選択肢が現実味を帯びてきました。