訪ねてきた元部下に言い放った“Aさんらしい”ひと言

Aさんは当初、3,000万円前後の中古マンションを探していました。しかし、妻と娘から「マイホームなら新築の戸建がいい。これまでたくさんお金を貯めてきたんだもの、退職金も十分にあるし、いま使わないでどうするの」と背中を押され、最終的には5,500万円の戸建の分譲住宅を購入することにしました。

すると、「あのAさんがマイホームを買う」と聞きつけた元部下が訪ねてきました。

「住宅ローンはもちろん組みますよね? それなら、500万円でもぜひ当行でローンを組んでください。Aさんは元行員で与信もありますから、最大限優遇できますよ!」

しかし、Aさんは首を縦に振りません。

「ローンは借金だぞ。現金で買えるのに、なんでわざわざ金利を払わなきゃならんのだ。もったいない!」

倹約家のAさんにとって「金利は悪」です。いくらこれまでお世話になった銀行であろうと関係ありません。当初の予定どおり“現金一括”でマイホームを購入しました。

ちくしょう、ちくしょう…住宅購入で判明した“まさかの事実”

Aさんには、貯蓄と退職金をあわせて6,800万円の預金がありました。ここから5,500万円で住宅を購入したため、65歳から老齢厚生年金を受給するまでの“無給の5年間”を、1,300万円で過ごすことになります。

「これまでどおり倹約していれば大丈夫だろう」と思っていたAさん。しかし、引っ越してしばらくすると、居住地の市役所から、退職後に切り替え手続きをした国民健康保険料やBさんの国民年金保険料、それに住民税の納付書が届きました。

また、マイホームを購入したことで、今後は毎年固定資産税の納付や自宅の修繕費といった支出も必要です。

長い時間をかけて貯めたお金が手元からどんどんなくなる様子に不安を覚えたAさんは、慌てて元いた銀行に雇ってもらおうと当時の部下に掛けあいました。しかし“ケチおじ”に人望はなく、さらに住宅ローンも断ったことから、「薄情なAさんに義理はない」と、冷たくあしらわれてしまいました。

「ちくしょう、ちくしょう……こんなことなら家なんて買わなきゃよかった! これからどうしよう、このままじゃ破産だ」

誰かに相談したいと考えたAさんは、銀行員時代の知り合いであるFPの筆者のもとへ相談に訪れました。