どんなに介護や看護に貢献していたとしても、通常「相続人の子の嫁」に遺産相続権はありません。井上みさ子さん(仮名)も、そのうちの1人です。みさ子さんは義母への献身的な介護を続けていたものの、自己中心的な義姉に疲弊しているようで……。FPの山﨑裕佳子氏が具体的な事例をもとに「相続人の子の嫁」に起きがちな相続トラブルとその解決方法について解説します。
あら、アナタまだいたの?…59歳“バリキャリ小姑”の嫌味に耐える55歳専業主婦、4年間の介護の末看取った義母の“天国からの贈り物”に号泣→小姑“ブチ切れ”のワケ【FPが解説】
激変したみさ子さんの日常
それ以降、みさ子さんの生活は180度変わりました。午前中に、自分の家の家事と夕飯の下ごしらえをして、午後は義母の病院へ洗濯物の交換に向かいます。義母は歩けないものの意識はしっかりしているため、暇を持て余している様子。2時間ほど義母のおしゃべりに付き合い、ようやく帰宅することができます。
こうした日々が2ヵ月間続き、義母は歩行器や杖を使えば歩けるまでに回復。退院が決まりました。
しかし、義母と退院を喜び合ったのも束の間、実際は、退院後のほうがみさ子さんにとってハードな生活が待っていました。実家で家事をする人がいないのです。
義母が入院してからも、ゆかりさんは相変わらず仕事一辺倒であてになりません。義母は入院中に体力が落ちてしまったせいか疲れやすくなり、食事の支度ができる状態ではありません。
ゆかりさんは、みさ子さんにこう言いました。
「ねえあなた、お母さんの食事の準備してくれない? あ、私のことは気にしないで。自分の分はなんとかするから」
1人分とはいえ、みさ子さんは毎日、義母の食事の準備をするハメに。結局、義母の介護と家事のため、毎日のように実家に通うことになりました。
実家と自宅との往復の日々は、みさ子さんの心身をむしばんでいきます。義母はことあるごとに「みさ子さん、いつもありがとうね。本当に感謝しているわ」とあたたかい言葉をかけてくれる一方で、義姉はそんなみさ子さんをねぎらうどころか「あら、アナタまだいたの?」と、まるで早く出ていけと言わんばかりです。
「もう、限界かも……」
ストレスのかかる日々が続いていましたが、4年後のある日、1週間前から風邪をこじらせていた義母は、そのまま息を引き取りました。
義母を失った悲しみと、ようやく終わった介護生活に対する安堵で、みさ子さんはしばらく涙が止まりませんでした。