どんなに介護や看護に貢献していたとしても、通常「相続人の子の嫁」に遺産相続権はありません。井上みさ子さん(仮名)も、そのうちの1人です。みさ子さんは義母への献身的な介護を続けていたものの、自己中心的な義姉に疲弊しているようで……。FPの山﨑裕佳子氏が具体的な事例をもとに「相続人の子の嫁」に起きがちな相続トラブルとその解決方法について解説します。
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パートを始めたみさ子さんに襲いかかった「不運」
時々義母の愚痴を聞きに訪れていたみさ子さんですが、以前よりは実家に行く機会も減り、子育てもひと段落したことから、パートを始めることにしました。子どもたちも高校生になり、この先の教育費を貯めようと思ったのです。
パート先に選んだのは、家から徒歩15分の商業施設内にあるファストフード店です。十数年ぶりの仕事に戸惑う場面も少なくありませんでしたが、勉強熱心で社交的なみさ子さんは仕事を覚えるスピードも早く、ほどなくして職場で一目置かれる存在になりました。
長年復職を夢見てきたみさ子さんは「ようやく働ける!」と仕事にやりがいを感じ、そんな日々が2年ほど続きましたが、ある日 “不運”が襲います。
義母(当時86歳)が夜中にトイレに行こうとベッドから立ち上がった際に転倒し、大腿骨を骨折してしまったのです。幸いにもゆかりさんが家にいたことからすぐに救急搬送され、手術は無事成功しましたが、しばらくリハビリが必要になりました。
お見舞に訪れたみさ子さんに向かって、ゆかりさんは次のように言いました。
ゆかり「入院中の世話と退院後のリハビリの付き添いは、あなたにお願いするわね」
みさ子「ええ、全部ですか? 私にも仕事がありますし……せめて分担できないでしょうか?」
ゆかり「なに言ってるの。あなた、パートでしょ? 私とはわけが違うじゃない。いまだって、私は大事なプロジェクトが進行してるなか、大事な時間を割いてわざわざ来てるのよ。私は無理。申し訳ないけど」
医者からは、リハビリ期間は数ヵ月におよび、回復後も外出時は付き添いが必要になること、また義母の年齢を考えると、リハビリ後に以前のように歩ける保証はないことを告げられました。
ようやく再開した仕事を辞めるわけにはいかないとあれこれ熟慮したみさ子さんでしたが、帰宅後に相談した夫にも「みさ子、すまないが頼む」と懇願されてしまいました。悩んだ末、泣く泣くパート先の退職を余儀なくされました。