65歳以降も年金をもらいながら働くことが多くの人にとって現実的な選択肢となりつつあります。しかし、制度について理解が不十分のままでいると、「働いていたのに、思ったよりも年金が減ってしまった」という事態にもなりかねません。今回は、65歳以降も働き続ける選択をした会社員男性を事例に、年金制度の意外な落とし穴について南真理FPが解説します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
ひたすら真面目に働き、65歳以降も前向きに仕事を続けるつもりだった64歳会社員。年金事務所で告げられた〈月10万円の年金カット〉に思わず怒り「長年苦労してきたのに、あんまりでは」【FPの助言】
お金かやりがいか?
石田さんは、長年勤めた会社に恩義を感じ、働きがいも感じています。たとえ年金が減額されても働き続けるべきか悩み、苦楽を共にした妻に相談しました。すると、返答はこうでした。
「たとえ年金が減ったとしても、今の仕事にやりがいを感じるのであれば、このまま働き続ければいいと思うわ。あなたのこれまでの経験を活かせば、後輩の育成や会社への貢献にもつながるでしょう。それに、厚生年金を払い続けるのだから、将来受給する厚生年金も増えるはずよ。幸い、私も会社員として働き続けてきたから、私自身の厚生年金もあるしね。今後のお金の不安を解消するために、知り合いのFPさんに一緒に相談しに行きましょう」
妻の言葉を受け、石田さんは「やはり働き続けよう」と、決意。65歳を過ぎた今も前向きに働いています。
「年金の減額」と「仕事のやりがい・収入の安定」を天秤にかけたとき、「この会社でまだ働きたい」と強く思うのであれば、年金の減額を気にせずに働き続けるのも一つの選択肢です。
一方で「そろそろ自分の時間を大切にしたい」「負担を減らしたい」と思うのであれば、給与を調整する、または退職してフリーランスとして働くといったように、今後の働き方を検討するといいでしょう。
お金は、安心した生活を送るための基盤となります。それと同時に、働く目的や人生の充実度も、生きがいとして重要な要素です。制度について正しく理解した上で、最も納得できる道はどれなのかを、ご自身のライフプランに即して考えることが大変重要です。