保険は非課税では?相続にまつわる生命保険の勘違い 

Aさんの母親は、享年92。10年前に3歳年上の夫を亡くしており、相続人はAさんと弟の2人のみです。相続財産は現預金2,000万円と自宅を含めた不動産が2ヵ所あり、あわせて1,500万円。それに、死亡保険金がAさんと弟が受け取ったものをあわせて3,000万円ありました。

Aさんが勘違いしていたのは、死亡保険金にまつわる相続税の取扱いでした。Aさんは保険から受け取る死亡保険金は、相続税がかからないと思い込んでいたのです。

しかし、実際には相続税額の試算結果は2人あわせて約110万円。死亡保険金のうち、非課税となるのは1,000万円のみで、残る2,000万円は遺産総額に組み入れられ、約1,100万円が相続税の課税対象となるとのことでした。

「死亡保険金は相続財産にあたらず、相続税がかからない」といった勘違いはよく見受けられます。

たしかに、死亡保険金は「みなし相続財産」となり、通常の相続財産とは切り離され、受取人固有の財産となるため、遺産分割の対象とはなりません。しかし、相続税がかからないかどうかは別の問題となります。死亡保険金には一定の非課税枠が設けられていますが、非課税枠を超えると超えた部分が遺産総額に組み入れられ、相続税の計算がなされます。

なお、死亡保険金の非課税金額の計算方法と相続税計算の基礎となる課税遺産総額の計算方法は以下のとおりです。

【死亡保険金の非課税限度額】

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

※死亡保険金の受取人が相続人である場合に適用。相続を放棄した人や相続権を失った人、孫などの相続人以外の人が取得した死亡保険金に、非課税の適用はありません。

【相続税の課税遺産総額の計算方法】

課税価格の合計額 - 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)

※法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとして数える。

したがって、Aさんの母親の場合は、死亡保険金の非課税限度額は1,000万円、基礎控除額は4,200万円となる計算でした。

よく似た勘違いとして、生命保険から受け取るお金はすべて非課税枠を利用できる、といったものもあります。前述の非課税限度額が適用されるのはあくまで相続人が受け取った死亡保険金です。たとえば、医療保険からの入院給付金やすでに受け取りを開始していた個人年金保険から受け取る一時金、学資保険の学資金に死亡保険金の非課税枠は適用されません。

また、1人あたり500万円まで非課税となる、といった誤解も見受けられますが、1人あたりの非課税枠は受け取った死亡保険金額に応じて相続人間で按分されます。1人で非課税枠を大きく使える場合もありますし、受けられる非課税枠が500万円に満たない人が発生する場合もあります。

これらの誤解は、時折、保険代理店の担当者にも見受けられます。