どんなに潤沢な老後資金を蓄えていても、何が起こるかわからないのが人生。65歳の本山さん夫婦の事例をもとに、老後起こりうる“思わぬリスク”と、最悪の事態を回避するための対策をみていきましょう。神戸・辻本FP合同会社代表の辻本剛士氏が解説します。
愛だけではどうにもならないんですね…〈年金月23万円・貯金3,000万円〉子のいない65歳“晩婚カップル”が「老後破産」に怯えるワケ【CFPの助言】
FPが夫婦に行った「意外な提案」
これからの暮らしについて心配になった本山さん夫婦はその後、知り合いの紹介でFPに相談することになりました。
相談の場で、大介さんはこれまでの経緯を詳しく説明しました。母の介護のこと、美奈子さんの姉の介護のこと、そして減り続ける資産のこと……。
話を聞いたFPは、冷静に現状を分析したうえでいくつかの提案をしてくれました。
「たしかに、このままのペースで資産を取り崩していくと、枯渇する可能性はゼロではありません。しかし、あと10年程度で住宅ローンが完済となります。以降は支出が一気に減るため、資産の減少も緩やかになるでしょう」
さらに、FPは本山さんの自宅についても言及しました。
「本山さんの自宅は駅から徒歩圏内で立地的には申し分ありません。万が一資金が底をつきそうになった場合は、売却してまとまった資金を確保することもできます」
売却の選択肢を聞き、大介さんは少し驚いた表情を見せました。
「家を売る、ですか」
「はい。もちろん、急いで決める必要はありません。ただ、将来的に選択肢のひとつとして考えておくことは大切です。また『リバースモーゲージ』を活用する方法もあります。これは、自宅を担保にしてお金を借り、住み続けながら資金を確保する仕組みです」
「なるほど、そんな方法もあるんですね」
リバースモーゲージを利用すれば、いまの住まいを手放さずに生活資金を確保することも可能です。資産が減ることに対する不安が強かった大介さんにとって、この提案は少し気持ちを楽にするものでした。
「いまの状況を考えると、このタイミングで無駄な固定費を減らすことが大切です。通信費や保険料、サブスクリプションサービスなど、見直せる支出がいくつかあります。少しでも支出を抑えれば、資産の目減りを遅らせることができますよ」
家計改善策の提案のあと、FPは資金の問題だけでなく、今後の介護負担についてもアドバイスをくれました。
「今後もケアマネージャーと連携を取りながら、少しでも介護負担を軽減できるような体制を整えていきましょう。2人だけで抱え込むのではなく、利用できる介護サービスは積極的に活用してください」
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表
