「まさか、こんな理由で……?」。年収800万円、20年以上の勤続年数、完璧な返済履歴。「十分審査は通るはず」と考えていた住宅ローン申請で、中井仁さん(55歳、会社員)は思いもよらない壁に直面しました。その理由は、日々の買い物習慣に潜んでいたのです。ファイナンシャル・プランナーの青山創星氏が詳しく解説します。

銀行員「残念ですが…」年収800万円・勤続20年以上の55歳会社員、念願のマイホームの購入を決めるも、住宅ローン申込みで「まさかのお断り」となったワケ【FPの助言】
審査を通らなかったのは、まさかの…?
「このスコアを見る限り、審査を通らなかった理由はここにある可能性が高そうですね」と永瀬FPは説明を始めました。
「クレジットカードのリボ払いの残債が多い状態が大きくスコアを下げているんです。毎月の返済は確実にされていますが、実は危険信号として捉えられます。また、7つのクレジットカードのうち6つにキャッシング枠が設定されているのも、ローン審査に悪い影響を与えています」
「リボ払い? 私はいつも一括払いにしているはずですが……」と困惑する中井さん。
「奥様のカードの利用明細はご覧になっていましたか?」
「いえ、毎月きちんと引き落としされているので、特に気にしていませんでした」
「各カードの利用明細やマイページでリボ枠やキャッシング枠がいくらに設定されているのかと残高の推移を確認してみてください」と永瀬FPはアドバイスしました。
帰宅後詳しく確認してみると、妻真紀子さんは家族カードでの大口の買い物をすべてリボ払いに設定していたことが判明。毎月8万円のリボ払いで、すでに限度額いっぱいの100万円まで残高が積み上がっていました。
さらに、キャッシング枠も全てのクレジットカードの合計で200万円を超えていることも判明。
「私、リボ払いって便利だと思って使っていたんです」と真紀子さん。「大きな買い物をしても毎月の支払いが一定だし、家計管理がしやすいと思って……」
真紀子さんは、家計管理に良かれと思ってリボ払いをフル活用していたのでした。永瀬FPを再訪し事の次第を伝えると、永瀬FPはリボ払いの実態について説明を始めました。
「確かに毎月の支払いが一定というのは魅力的に見えます。でも、実は大きな落とし穴があるのです」
「安心のための対策」審査通過に必要なチェックポイント
「まず、リボの限度枠をいっぱいまで使っておられます。銀行からすると、予期せぬ支出が発生した際の余力がないと判断されてしまいます。さらに、毎月8万円のリボ払い返済額を含めると、住宅ローンの返済負担率(年収に占める年間の返済額の割合)が基準を超えてしまうんです」
このままでは希望額の4,200万円ではなく、2,000万円程度しか借りられない状況。しかし、クレジットカードのリボ払い残高を完済しキャッシング枠を整理すれば、4,200万円の借入も可能になると分かりました。
永瀬FPのアドバイスを受け、中井さん夫妻は再審査に向けて以下の対策を実行することにしました。
2.家族カードの支払い方法を一括払いに変更
3.毎月の支出を見直し、返済余力の確保
4.家族での家計管理ルールの再構築