キャリアアップを目指してバリバリ仕事をこなしていたサラリーマンのAさん。めでたく部長に昇進し、“部長手当”に喜んだのもつかの間。給料日に明細を確認したところ、思わず二度見してしまう事態に。いったいなにがあったのでしょうか。FPの武田拓也氏が具体的な事例をもとに、所得税や住民税の仕組みを解説します。

なにかの間違いでは…年収900万円・46歳サラリーマン、念願の「部長」昇進でガッツポーズ→給与明細を“思わず二度見”したワケ【FPの助言】
給与所得者の平均年収は460万円…900万円は上位何パーセント?
1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は次のとおりです。
給与所得者数は5,076万人で、その平均給与は460万円となっています。男女別にみると平均給与は男性569万円、女性316万円です。正社員と正社員以外の平均給与についてみると、正社員530万円、正社員以外202万円となっています。
年収900万円超の給与所得者はどれくらいいるかというと全体の7%程度です。上位7%に入ったAさんですが、年収は900万円を超えているため高所得者となり、所得税の税率も高くなっています。
年収が1,000万円でも手取りが増えない…所得税の仕組み
所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと5%から45%の7段階に区分されています。
所得税は累進課税のため、所得が高ければ高いほど税率も高くなる仕組みです。所得が900万円を超えると、所得税率が23%から33%に10%上がります。そのため、所得が増えても思ったほどに手取り額は増えません。
さらに社会保険料もAさんのように年収が上がるにつれて増加していきます。厚生年金や健康保険に加え、40歳以上の人は介護保険料も負担するようになり、額面に対して手取りは少なくなります。
所得税の例
所得/年800万円の場合………800万円×23%-636,000円=120.4万円
所得/年1,000万円の場合……1000万円×33%-1,536,000円=176.4万円
住民税の増加
また、手取りが減る原因となる税金は、所得税以外にも住民税があります。住民税は前年の所得に基づいて計算されます。
Aさんは昇進するために仕事を頑張っていたため残業も多く、住民税が思いのほか引かれていました。住民税は10%(道府県民税4%、市町村民税6%)が一律に課税されるため、年収増加に比例して負担する住民税も増えていきます。