就職氷河期のさなか、大宮さん(仮名・44歳)が入った会社は業界中位の「消費者金融」。約17年勤めた大宮さんがそこで目にしたのは“日本の暗部”でした……。ルポライターである増田明利氏の著書『今日、借金を背負った 借金で人生が狂った11人の物語』(彩図社)より、「お金を貸す側」の本音をみていきましょう。

お金を貸す価値のない人間はいます…業界歴17年、就職氷河期を経験した44歳“元・金融マン”が語る「消費者金融」が“あえて高金利”なワケ【ルポ】
借金の“取り立て”業務…ドラマと現実の違い
新規の客にどれくらい貸し付けるのかというと、最初は10万円が限度。返済状況を見て追加融資をすることもあるがそれも10万円が上限だ。
「昔はジャブジャブ貸していたそうですが、返済が困難になりそうだったり他社からも借入れていたりするのは断っていました。後が面倒ですからね」
貸した金は利息を付けてきっちり返してもらうのだが、返済が滞る客もいる。そうなると“取り立て”ということになる。
「他社のことは分からないけど、自分がいたところはいきなり『おい、コラ!』なんてやりませんよ」
返済日を過ぎても入金が確認できなかったら最初は手紙か電話。
「期日を過ぎましたが入金が確認できません。どうされましたか?」という感じで連絡をとる。これで駄目なら電報。措置を取りますよという“ちょっとした脅し”で圧力を掛ける。
「手紙も電話も電報も駄目となったら訪問ですが、いきなり怒鳴り散らしたりはしません。まず、いつ入金するのかを問いただします。遅延するとこういう不都合が起きる、これはあなたにとって損になると諭すわけです。基本的には話し合いで、カウンセリング的なこともやるんです」
だけど延滞する人には駄目人間が多かった。
「督促の連絡をすると『明日中には入金します』と言いますが入金してきません。どうしたんですかと電話したら、ATMに行く途中にパチンコ屋へ入ったら返済する金をスッた、週明けには必ず返すなんて言うんです。
とりあえずもう2日待ちましたがやっぱり入金がない。仕方ないから直接訪問すると、今度はひったくりに遭って持ち金すべて盗まれたなんていう言い訳でね。子ども騙しにもならない嘘を並べるんですよ」
男も女も、水商売絡みで借金を重ねてしまうことも多かった。
「男だとキャバ嬢に入れ揚げる、女ならホスト遊びのため。これで30万円、他社と合わせると軽く100万円を超える借金を作る人も多かったですね」