就職氷河期のさなか、大宮さん(仮名・44歳)が入った会社は業界中位の「消費者金融」。約17年勤めた大宮さんがそこで目にしたのは“日本の暗部”でした……。ルポライターである増田明利氏の著書『今日、借金を背負った 借金で人生が狂った11人の物語』(彩図社)より、「お金を貸す側」の本音をみていきましょう。

お金を貸す価値のない人間はいます…業界歴17年、就職氷河期を経験した44歳“元・金融マン”が語る「消費者金融」が“あえて高金利”なワケ【ルポ】
中高年中心→派遣社員、主婦…時代で変化する客層
仕事は最寄り駅の駅前やアーケード街でのティッシュ配り、来店者の接客、督促や返済が遅れている客への訪問、法的処置のための書類作りなどだ。
「自分が就職したばかりの頃、10年目頃、辞める直前では客層がガラリと変わりましたね」
最初の頃は男女問わず中高年の人が圧倒的多数だった。融資する際にそれとなく使い道を聞き出すのだが、零細企業の経営者だと支払いのため、女性だと生活費の足しという答えが多かった。
「どの人も顔に生活に疲れた感が出ていましたね。ギャンブルの資金にするとか他の消費者金融の利息を払うためという客も多かった」
肥満気味、髪が乱れている、サラリーマン風でもスーツやワイシャツがヨレヨレだったり汚れている、靴が汚い、全体的に清潔感がない。いわゆる自己管理能力のなさそうな人が多かった。
客層が変わったのは大手業者が派手なテレビCMを流し、ソフト感を演出してからだ。
「かなり名の知れた会社のサラリーマン、OL、学生、フリーター。ニートまで借りに来ましたね」
消費者金融を利用する顧客の特徴
新しく顧客になった若い人たちにはある種の共通点があった。
「まず派遣で働いている人たちです。生活費がショートしやすい派遣社員だと休みが多い月は収入が減るのに出費は逆に増える。これで生活費が逼迫するんですね。特に生産工場の派遣社員はお得意様でした」
およそ消費者金融とは無縁そうな若い女性も新しい顧客になった。
「借金の理由や目的がエステの費用だったり海外旅行の費用でね。浪費傾向の強い感じでした。けっこうスレンダーでかわいい系だったり、話し方がおっとりしていたりというのが共通項でした」
夫はそこそこ安定している会社に勤めている専業主婦が新しい顧客になったのも、昔では考えられなかったことだ。
「既婚女性の場合、借金の理由は服やブランド物などのプチ贅沢が原因のようでした。近所の奥さん同士で見栄の張り合いをするんでしょうね。専業主婦の場合、たいてい家計の管理を任されているから月2万円程度の返済だと亭主の給料から返済できる。事故の少ない上顧客になってくれました」