湾岸にあるタワマンで仲良く暮らす59歳の共働き夫婦。しかし、夫の急逝により1人のこされた妻のもとに、ほとんど面識のない「海外在住の義弟」が現れ、“驚きの要求”をしてきたのです……。FPの山﨑裕佳子氏が具体的な事例をもとに「遺産相続」の注意点について解説します。

〈世帯年収1,400万円・貯金3,500万円〉子のいない59歳共働き夫婦、湾岸タワマンで“幸せな老後”のはずが…夫の急逝で「海外帰りの義弟」と修羅場に→84歳義母の「ひと言」に拍手喝采【FPが解説】
遺産をもぎ取ろうと奮闘する義弟に、義母が放った「トドメのひと言」
「それなら、話し合いだ! いまから俺が遺産をもらうってことを母さんとあなたに認めさせればいいんだろ!」
遺言書がないことがわかり、無理やり「遺産分割協議」を始めようとする義弟に、隣の部屋で寝ていた84歳の義母も起き上がり、開口一番こう言いました。
「うるさい! あんたが投資で負けた金はもう戻ってこない! 私が死ぬまでおとなしく待ちなさい。そうしたら私の遺産は全部あなたのものになるんでしょう!」
義母は夫を6年前に亡くし、夫の遺産を相続しています。不謹慎ながら、あまりの剣幕に義弟はようやく大人しくなりました。
「……投資?」
ヤスコさんが尋ねても、タカフミさんは顔を真っ赤にして黙ったままです。
あとでわかったことですが、タカフミさんは最近、投資で大きな失敗をしてしまったらしく、遺産で穴埋めできると踏んでいたようです。
結局、マサルさんの遺産について、義母は相続を放棄。マサルさんの遺産は、すべて妻であるヤスコさんが相続することで落ち着きました。
後を絶たない「相続トラブル」…専門家に相談のうえ、冷静に対処を
法務省民事局が行った遺産分割等に関する認知度調査によると、相続の際に相続人間で遺産分割を行った人は約62%。このうち、専門家などに相談せずに、当人同士で相談して分割合意した人は約70%、専門家に相談して遺産分割に合意した人は約23%となっています。
もともと遺産分割や相続の知識があるという人は多くないでしょう。今回のヤスコさんのように、親や兄弟姉妹が亡くなり当事者となったことで初めて問題に直面する人も多く、相続トラブルに発展してしまうケースも少なくありません。
特定の人に財産を相続させたい場合は、「生命保険の活用」や「遺言書」が効果的です。生命保険金は受取人の固有の財産となるため、遺産分割協議から除外されます。
金銭が絡んだトラブルは、それまでの関係が一変してしまうことが少なくありません。トラブルを避けるためには、あらかじめ相続に関する一定の知識を身につけておくことが重要です。また、困ったときは専門家のサポートを受けながら、冷静に対処するようにしましょう。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表