世帯年収1,400万円…「遺跡巡り」が趣味の仲良し夫婦

佐々木マサル・ヤスコさん夫婦(仮名・59歳)は、高校時代の同級生です。同窓会での再会後に交際へ発展した2人は、28歳のときに結婚しました。それ以降、夫婦共働きでありながら、良好な関係を保っています。

妻のヤスコさんは貿易会社で事務課長を務めており、昨年の年収は600万円でした。一方、夫のマサルさんは中堅商社の営業職で、年収は800万円ほど。佐々木夫妻の世帯年収は1,400万円です。

2人とも結婚当初から子どもを望んでいましたが、長い不妊治療を経ても、希望は叶いませんでした。35歳を過ぎたころ、「子どものいない人生でもいいじゃないか。2人だからこそできることを精一杯楽しもう!」と、夫婦だけの生活を前向きに歩んでいくことを決断しました。

そして、40歳のときに東京湾岸エリアのタワマンを共有名義で購入。59歳の現在、住宅ローンは間もなく完済するというところです。

働き者の2人は結婚して以来、負債は住宅ローンのみという堅実な家計を築いてきました。それでも金銭的に余裕があったことから、夫婦は共通の趣味である「遺跡」をめぐる旅にお金を使おうと、長期休暇を利用して年に2回は国内外の名所に足を運んできました。

こうした比較的ゆとりのある暮らしぶりで、佐々木家の預金残高は59歳の時点で3,500万円となっていました。

60歳目前のある日…夫婦に訪れた「悲劇」

マサルさんの還暦を3ヵ月後に控えたある日のことです。マサルさんはヤスコさんに次のように言いました。

マサル「ちょっと、いいか? もうすぐ住宅ローンの返済も終わるしある程度の蓄えもあるから、思い切って60歳で退職しようと思うんだ。どうかな?」

ヤスコ「あら、いいじゃない。これまで一生懸命働いたんだもの。じゃあ私も60歳になったらフラダンスを習おうかしら。実はずっとやりたかったの」

マサル「フラダンス!? いいじゃないか!」

マサルさんの勤務先は、65歳まで再雇用で働けることになっていますが、マサルさんは60歳で完全に仕事を辞め、老後を謳歌しようというのです。夫の考えに、妻は二つ返事で了承。夫婦は、互いを尊重しながらも、退職後の生活に心を躍らせていました。

しかし、その2ヵ月後、夫婦に“思わぬ悲劇”が襲いかかります。マサルさんが、「くも膜下出血」により急逝してしまったのです。