いずれ多くの人が抱えるだろう「親の介護」。肉体的な負担、精神的な負担、さらには金銭的な負担に追い込まれるケースも珍しくありません。どんなに大切な親でも、重い介護負担を前に、はたからみれば「人でなし」と思われるような感情を抱いてしまうことも珍しくはありません。
正直ホッとしています…〈月収22万円〉〈年金月16万円〉のサラリーマン、重すぎる介護負担に崩壊寸前。88歳で亡くなった母の葬儀で漏らした「本音」 (※写真はイメージです/PIXTA)

父親に続き、母親の介護に翻弄された3兄弟

山本浩一さん(仮名・65歳)。先日、母親を亡くしました。88歳でした。葬儀は親族だけで済ませたといいますが、そこでポロっと出た本音が「正直、ホッとしている」というもの。

 

母親が亡くなる10年ほど前のこと、当時80歳だった父親が自宅で転倒したのを機に要介護3に。父親は他人が家を出入りするのを極端に嫌う人だったため、外部サービスは極力使わず、家族総出で在宅介護に追われたといいます。

 

――父親の介護は、亡くなった母親と3つ上の兄、1つ上の兄、そして私の4人で。兄も私も実家からほど近かったのが唯一の救いでした。きつかったですね、介護と仕事の両立は

 

父親の介護は2年ほどで終わりを迎えましたが、母親も亡くなった父親と同様に転倒・骨折を機に、要介護1の認定。実家でのひとり暮らしは、少々危なっかしい……そう考え、3兄弟交替で実家に寝泊まりするようになったといいます。それから2年ほど経ったころ、ふと母親の日々の行動に違和感を覚えます。

 

【要介護1と要介護3における「同居の主な介護者」の介護時間の構成割合】

■要介護1

ほとんど終日…11.8%、半日程度…8.9%、2~3時間程度…12.4%、必要なときに手を貸す程度…55.3%

■要介護3

ほとんど終日…31.9%、半日程度…21.9%、2~3時間程度…11.5%、必要なときに手を貸す程度…26.0%

出所:厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』

 

――もの忘れが増えたほか、「財布を盗まれた!」と近所に触れ回る。いつも置いてある場所にあるのに、そのことを思い出せないんです。忘れてしまったことを「興味がないから」などとごまかしたり、あることないことを平気で語ったり

 

医師の診断は認知症の初期症状。それから2年ほど経つと認知症の症状も進行し、。いよいよ在宅での介護が難しくなってきたといいます。そこで介護施設への入居を検討。施設はすぐに決まったものの、月10万円ほど、月14万円だった母の年金だけでは補えない……仕方なく、3兄弟で負担することにしたといいます。