
父親に続き、母親の介護に翻弄された3兄弟
山本浩一さん(仮名・65歳)。先日、母親を亡くしました。88歳でした。葬儀は親族だけで済ませたといいますが、そこでポロっと出た本音が「正直、ホッとしている」というもの。
母親が亡くなる10年ほど前のこと、当時80歳だった父親が自宅で転倒したのを機に要介護3に。父親は他人が家を出入りするのを極端に嫌う人だったため、外部サービスは極力使わず、家族総出で在宅介護に追われたといいます。
――父親の介護は、亡くなった母親と3つ上の兄、1つ上の兄、そして私の4人で。兄も私も実家からほど近かったのが唯一の救いでした。きつかったですね、介護と仕事の両立は
父親の介護は2年ほどで終わりを迎えましたが、母親も亡くなった父親と同様に転倒・骨折を機に、要介護1の認定。実家でのひとり暮らしは、少々危なっかしい……そう考え、3兄弟交替で実家に寝泊まりするようになったといいます。それから2年ほど経ったころ、ふと母親の日々の行動に違和感を覚えます。
【要介護1と要介護3における「同居の主な介護者」の介護時間の構成割合】
■要介護1
ほとんど終日…11.8%、半日程度…8.9%、2~3時間程度…12.4%、必要なときに手を貸す程度…55.3%
■要介護3
ほとんど終日…31.9%、半日程度…21.9%、2~3時間程度…11.5%、必要なときに手を貸す程度…26.0%
出所:厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』
――もの忘れが増えたほか、「財布を盗まれた!」と近所に触れ回る。いつも置いてある場所にあるのに、そのことを思い出せないんです。忘れてしまったことを「興味がないから」などとごまかしたり、あることないことを平気で語ったり
医師の診断は認知症の初期症状。それから2年ほど経つと認知症の症状も進行し、。いよいよ在宅での介護が難しくなってきたといいます。そこで介護施設への入居を検討。施設はすぐに決まったものの、月10万円ほど、月14万円だった母の年金だけでは補えない……仕方なく、3兄弟で負担することにしたといいます。