
進学先を決めるのも、就職先を決めるのも、そこにあるのは「母親の影」
小林克哉さん(仮名・47歳)。勤務先はとある大手企業。小林さんは現在、課長職として忙しい日々を送っています。その経歴を語ると、多くの人が感嘆の声を漏らすでしょう。
中学受験をし、東大合格者ランキングでもお馴染みの中高一貫の男子校に入学。大学も国内トップクラスの一流大学に進学。大学院に進むか、それとも就職か、と悩みましたが、小林さんが選んだのは就職。大手企業でデータサイエンティストとして活躍し、現在はマネージャー職で多くの部下を束ねています。
給与は月収で68万円、年収で1,400万円。大企業の課長職としては平均を優に超える給与を手にしている小林さん。誰もが「エリートコースを歩んできた勝ち組」と羨望の眼差しを送るはずです。しかし、そんな声を聞くたびに違和感を覚えるといいます。
【企業規模別「大卒男性(課長職)」の平均給与】
企業規模別総合…月収53.3万円、年収877.8万円
従業員10~99人企業…月収44.3万円、年収680.4万円
従業員100~999人企業…月収49.8万円、年収791.4万円
従業員1,000人以上企業…月収61.5万円、年収1,055.9万円
出所:厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』
小林さんは幼いころから、親の期待に応えるために勉強を重ねてきました。
――母は常に「いい大学に行きなさい」「いい会社に就職しなさい」と言っていました。その言葉に従い、私は超一流といわれる大学に進学したんです。大学院に進みたいという希望がありましたが、「大学院に進学してもお金がかかるだけ。将来、出世したいなら就職しなさい」といわれ就職を選んだんです
就職として選んだのも、誰もが知る大手企業。これも母親の希望だったといいます。
――何社か内定をいただきましたが、そのうち私はあるベンチャー企業に興味があると言ったら、母は「ベンチャー企業なんていつ潰れるかわからない。大企業であれば安心よ」と。私は母の意見に従いました。そのほうが母が喜んでくれるので