定年を迎え、年金を受け取りながら穏やかな老後生活を送っていたものの、ひょんなことから前職に復帰することになった男性。しかし、「日本年金機構からの手紙」と「人事部からの知らせ」のダブルパンチによって、天国から地獄へ突き落とされてしまったのでした。具体的な事例をもとに、年金制度の注意点と老後破綻の回避策をみていきましょう。ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が解説します。
年金月19万円の66歳男性「再雇用」で収入激増→“バラ色の老後”を謳歌していたが…〈日本年金機構〉と〈人事部〉から告げられた“衝撃の事実”に顔面蒼白「妻に土下座します」【CFPの助言】
人事部からの「思いもよらない相談」
それから数ヵ月後、会社の人事部から呼び出しを受けた智之さん。そこで思いもよらない相談を持ちかけられました。
「智之さん、誠に申し上げにくいのですが、会社の業績が悪化しており、資金繰りが厳しい状況です。当初の契約では70歳までの雇用を予定していましたが、67歳で契約を終了させていただきたいと考えています」
突然の話に、智之さんは耳を疑いました。安定した収入がまだ3年近く続くと思っていた矢先の出来事に、言葉を失ってしまいます。
67歳での雇い止めが現実となれば、約1年後に月53万円の収入が途絶え、生活は再び夫婦の年金収入である25万円のみとなります。
しかし、すでに生活水準は上がっており、すぐに水準を落とすのは簡単ではありません。また、毎月11万3,000円の自動車ローンは、さらなる負担となって夫婦の暮らしにのしかかるでしょう。
「ちょっと待ってくれ! 急にそんなこと言われたって……このままじゃ生活できないよ!」
このままでは家計が破綻すると不安に駆られた智之さんは、自分1人では解決できないと考え、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談することを決意しました。
FPが提案した老後破綻の回避策
FPに一連の流れについて話すと、FPは中島家の家計状況を細かく分析。そして厳しい表情でこう言いました。
「中島さん、このままでは数年後には貯蓄が底をついてしまいます。いますぐ家計を見直し、支出を大幅に抑えましょう」
そして、具体的な支出削減案を次のように説明しました。
「まず、心苦しいですが、800万円で購入された車は売却し、中古車に買い替える必要があるでしょう。それでも300万円ほどローンが残る計算ですが、返済負担を減らすためには避けられない選択です」
「また、生活費全般も見直す必要があるでしょう。再雇用前の生活水準に戻すだけでなく、趣味への出費や固定費の削減を徹底します。まずは動画や音楽などのサブスクリプションサービスを見直し、不要なものは解約してください。
また、通信費も見直したうえで、安価なものに切り替えるのもおすすめです。ゴルフやキャンプが趣味と伺いましたが、趣味については毎月の予算を設け、それ以上は使わないようにします。
さらに、家計簿に記録することで、毎月の収支をできるだけ可視化しましょう」
「人生、なにがあるかわかりませんね……勝手に浮かれて好き勝手お金を使って、ほんとうにどうしようもないな俺は。まずは妻に土下座して謝って、心機一転、改めて老後の資金計画に真剣に取り組むことにします」
智之さんは苦い顔をして、こう言いました。
辻本 剛士
ファイナンシャルプランナー
