定年を迎え、年金を受け取りながら穏やかな老後生活を送っていたものの、ひょんなことから前職に復帰することになった男性。しかし、「日本年金機構からの手紙」と「人事部からの知らせ」のダブルパンチによって、天国から地獄へ突き落とされてしまったのでした。具体的な事例をもとに、年金制度の注意点と老後破綻の回避策をみていきましょう。ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が解説します。
年金月19万円の66歳男性「再雇用」で収入激増→“バラ色の老後”を謳歌していたが…〈日本年金機構〉と〈人事部〉から告げられた“衝撃の事実”に顔面蒼白「妻に土下座します」【CFPの助言】
担当者から告げられた“衝撃の事実”
担当者「中島さまは現在、総報酬月額相当額が53万円、厚生年金が月額13万円となっています。この合計66万円が在職老齢年金の基準である50万円を超えているため、通知書のとおり、年金の一部(月8万円)が支給停止となります」
智之さんはまさかの事実に顔面蒼白です。
「毎月8万円ですか!? そんなぁ……」
厚生年金が停止されること自体は制度上仕方ないと理解しつつも、生活に与える影響を考えると動揺を隠せませんでした。
年金事務所からの帰り道、智之さんは深いため息をつきながら考え込みます。
「毎月8万円も節約……? 道具をそろえてようやく趣味に本腰を入れたところだったのに。車のローンもあるし、生活費を削るしかないか……」
「在職老齢年金」の仕組み
「在職老齢年金」とは、老齢厚生年金の受給者が厚生年金保険に加入しながら給与収入を得た場合、年金の一部または全額が支給停止になる制度です。
支給停止額の計算式は以下のとおりです。
<支給停止額>
(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)×2分の1
注1)基本月額……老齢厚生年金(年額)を12で割った額(加給年金は除く)
注2)総報酬月額相当額……月給(標準報酬月額)に、直近1年間の賞与を12で割った額を足した額
智之さんの基本月額(老齢厚生年金の月額)は13万円、総報酬月額相当額は53万円ですから、今回の智之さんのケースでは下記のように計算できます。
<智之さんの支給停止額>
(13万円+53万円-50万円)×2分の1=8万円
このように、基本月額(厚生年金)と総報酬月額相当額の合計が50万円を超えてしまうと、在職老齢年金の対象となります。
毎月8万円もの年金が支給停止となり、生活費の削減を余儀なくされた智之さん。そのショックからまだ立ち直れないうちに、さらなる試練が訪れます。
