定年を迎え、年金を受け取りながら穏やかな老後生活を送っていたものの、ひょんなことから前職に復帰することになった男性。しかし、「日本年金機構からの手紙」と「人事部からの知らせ」のダブルパンチによって、天国から地獄へ突き落とされてしまったのでした。具体的な事例をもとに、年金制度の注意点と老後破綻の回避策をみていきましょう。ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が解説します。
年金月19万円の66歳男性「再雇用」で収入激増→“バラ色の老後”を謳歌していたが…〈日本年金機構〉と〈人事部〉から告げられた“衝撃の事実”に顔面蒼白「妻に土下座します」【CFPの助言】
智之さんにかかってきた“1本の留守番電話”が人生を変えた
そんな生活を続け、定年から約1年が経過したある日のこと、智之さんの携帯に1件の留守番電話が入っていました。相手は前職の社長で、電話の向こうの声は少し疲れているようです。
「もしもし。智之くん、お久しぶりです。お元気ですか? 実は、お願いがあって電話しました。もう1度、力を貸していただけないでしょうか……また連絡します」
いったいなにごとかと急いでかけ直すと、社長は「情けない話なんだが、もう1度働いてくれないか」といいます。聞けば、かつて会社を支えてきた智之さんの力を再び必要としているというのです。
「少し、考えさせてもらってもいいでしょうか」
電話を切った智之さんは、突然の提案に戸惑いを隠せません。
再雇用となれば、現在の穏やかな生活スタイルは一変します。しかし、社長直々の頼みには心を揺さぶられるものがありました。
さらに、提示された報酬は月53万円と、現役時代とほぼ同額。もうすぐ66歳になろうかという智之さんをこの金額で雇ってくれる会社はどこにもないでしょう。
悩んだ智之さんが由美子さんに相談すると「あなたがやりたいと思うなら応援するわ」と背中を押してくれました。
「この年でまた働くことになるとはな……」
智之さんは熟考の末、再雇用を受けることに。
久しぶりに職場へ足を運ぶと、社員は「また中島さんと一緒に働けるなんて嬉しいです!」と歓迎ムード。
笑顔で声をかけてくれる部下たちの姿に、智之さんは胸が熱くなりました。
年金+給与で驚きの年収に
再雇用時の契約内容は、70歳まで月収53万円。その後は1年更新というものです。
夫婦の年金収入は月25万円あるため、これを合わせると53+25=78万円と、最低でも70歳までは夫婦合わせて月78万円、年間に直すと900万円以上の収入が確保されることになります。
「再雇用で、会社から年間600万円近い報酬が入る。これが最低でも4年続くのか……すごいな」
そうして智之さんは、この収入を前提に老後計画を見直すことにしました。