女性のほうが長生きする傾向にあるため、夫の死後に妻が1人残されるケースは少なくありません。その際に大きく変わるのが年金受給額。想像以上の減少に驚いたという声も多く聞かれます。そこで、今回は老後の生活に大きな変化が起こった田中さん親子の事例と共に、いざというときに役立つ「年金生活者支援給付金」についてCFPの伊藤寛子氏が解説します。
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もっと早く帰っていれば…1年ぶりの帰省で発覚した実家の「変わり果てた様子」に息子呆然。年金暮らしの81歳母が涙ながらに語った“困窮”の理由【CFPの助言】
一人暮らしになった母の異変
地方出身の田中和彦さん(仮名・56歳)は、新卒で東京のメーカーに営業職として就職して以来ずっと東京勤務です。自宅も東京に購入し、家族と共に暮らしています。
実家では父と母の2人暮らしでしたが、昨年父親が病気で他界しました。81歳と高齢の母が一人になることを心配した田中さんは、東京で一緒に暮らすことを提案しましたが、地元と住み続けた家から離れたくない、と母から断固拒否されました。
一人暮らしになる母が心配ではありましたが、「私は大丈夫だから」と意思が固く、その言葉を信じて別々に暮らすことにしました。
もともと実家と頻繁にやり取りするタイプではなかった田中さんは、仕事の忙しさもあり、こまめに母の様子を伺う連絡をすることはありませんでした。実家は遠方で交通アクセスも不便な地域にあるため、なかなか帰省するタイミングも取れずにいました。
そして、ようやく父の1周忌法要で帰ると、実家が様変わりした状態になっていたのです。
父のものが手つかずで残っているだけでなく、部屋中に物やゴミが溢れかえっていて、まったく片づけができていない様子でした。
尋常じゃない状態に呆然としましたが、元気がなく、もともとはこんな状態にするとは思えない母の様子が気になった田中さんが母に話を聞くと、涙ながらに答えました。
「お父さんが亡くなっても、家や生活が変わるわけじゃないし、一人でも大丈夫だと思っていたんだけど。年金が振り込まれたら、こんなに年金が減るとは思ってなくて、びっくりしちゃって。遺族年金がもらえるから何とかなるのかなって思ってたけど、これしかもらえないなんて思ってもみなくて。今までは2人でもらえる年金でなんとか暮らしていたけど、これだけじゃとても足りないし、この先どうなるのか不安で仕方なくなったら、何も手につかなくなってしまって……」