増加するシニア起業。開業職種で人気は「飲食」
山中さんは60歳定年で仕事を辞め、友人とともに起業。始めたのは飲食店でした。
――ちょうどインバウンドで、いい感じだったから。「ザ・居酒屋」みたいな店ならいけるかなと思ったんですよね
ただ開店から間もなくコロナ禍となり、やむなく閉店。そのときの負債はお互い退職金などで清算したといいます。しかしコロナ禍があけ、不完全燃焼だった起業への挑戦にまた火がつきます。ただ最初の起業はあまりに安易だったと反省し、“修業”として居酒屋でアルバイトをしているのだとか。
――息子たちと同じくらいの年齢の子たちに叱責される日々ですから……自信喪失ですよ(笑)
プライドを捨ててでも居酒屋バイトを続けるのは、再度、起業に挑戦したいという思いから。友人も同じように別業態の飲食店でアルバイト中。以前は安易に考えていた飲食店経営ですが、もっと綿密な計画のもと、再度出店を目指しています。
株式会社アントレによると、2023年の新設法人は約15万人。個人・法人の割合では、個人が85.2%を占め、年齢では「50代」が35.0%と最多。続いて「40代」が29.6%、「30代」が16.0%。「60代」も15.9%と、シニア起業は珍しいものではありません。
開業職種としては「飲食」が9.3%と最多。「IT・通信・携帯電話」が8.2%、「移動販売・宅配・テイクアウト」が7.7%、「運送・配送」が7.6%、「リサイクル・リフォーム」が7.3%、「雑貨・インテリア・アパレル」が7.2%と続きます。
――妻は呆れかえっていますが、「やりたいことがあるならやれば」といってくれています。あっちも好きなことができて都合がいいんだと思いますが
内閣府『令和6年版高齢社会白書』によると、「65~69歳」の就業率は53.5%。「70~74歳」で34.5%、「75歳以上」で11.5%です。高齢者の3割が「家計にゆとりがない」というなか「生活のために働いている」という人は多いでしょう。一方で「老後を豊かに過ごすために働いている」という人も一定数います。
年金を受け取る年齢になっても、起業を目指す山中さん。その姿勢を羨ましく思うか、無謀と思うかは人それぞれでしょうか。
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