用途地域13種類一覧|概要・特徴・制限
ここでは全13種類の用途地域について、それぞれの概要・特徴・建築制限を詳しく紹介します。適切な投資判断を下すためにも、各地域の特性をしっかりと理解しましょう。
なお、自治体によっては景観条例などで異なる制限を課している場合もあるため、あらかじめ対象地域の自治体に確認する必要があります。
<用途地域>
①第一種低層住居専用地域

第一種低層住宅専用地域は、閑静な住宅街を形成するための用途地域です。公共施設を除けば、住宅・共同住宅・寄宿舎・下宿のみが建設できます。住宅も戸建て住宅やアパートなどの低層の建物に限定されており、商業施設や事務所の建設は原則として認められません。また、公共施設においては大学や病院の建設も認められていません。高さに関する規制として、絶対高さ制限に加えて道路斜線規制、北側斜線規制、日影規制があることに注意が必要です。
不動産投資の観点からは、安定した賃貸需要が期待できる一方で、建物の用途や規模に大きな制限があることから、投資戦略は限定的となります。ただし、閑静な住環境が確保されるため良好な住環境が維持されることで、長期的な資産価値の保全が期待できる地域でもあります。
②第二種低層住居専用地域

第一種低層住宅専用地域と同様に低層住宅地を主体とした閑静な住宅地の形成を目的とした地域ですが、建築制限は一部緩和されており小規模な店舗や事務所との兼用住宅が認められています。例えば、床面積150㎡以下の日用品販売店舗(コンビニエンスストアなど)・喫茶店・理髪店などの建設が認められています。
投資物件としては、住宅需要に加えて、小規模な店舗やSOHO需要も見込めるため、より柔軟な活用が可能です。地域の特性を活かした、住宅と小規模商業の複合的な運用戦略を検討することができます。
③第一種中高層住居専用地域

第一種中高層住居専用地域では、第一種・第二種低層住居専用地域とは異なり、絶対高さ制限がなくなり、中高層の共同住宅やマンションの建設が可能な地域です。ただし、道路斜線規制・北側斜線規制・日影規制に加えて、隣地斜線規制が適用されます。建設可能な店舗としては、床面積が500㎡以下のものまで制限が緩和されるため、物品販売店舗・飲食店・損保代理店・銀行の支店・教育施設や医療施設なども建設できることから、利便性の高い居住環境を形成します。
投資的観点からは、マンション経営やアパート経営に適しており、一定の人口密度を確保できることから、安定した賃貸需要が期待できます。
④第二種中高層住居専用地域

住居の環境を保護しながら、一定規模の店舗や事務所の立地が可能な地域です。生活利便施設との共存が図られており、都市型の居住環境を形成します。第一種中高層住居専門地域と同様に絶対高さ制限がなく、道路斜線規制・北側斜線規制・隣地斜線規制・日影規制は適用されます。その一方で、建築可能な店舗は床面積1,500㎡以下のものまで緩和され、店舗事業に関する制限もなくなります。
投資としては、住宅需要に加えて、近隣型の商業需要も見込まれるため、複合的な収益構造を構築できる可能性があります。用途の多様性から、市場環境の変化にも対応しやすい特徴があります。
⑤第一種住居地域

第一種住居地域は、主に住居の環境を保護しながらも、日常生活に必要な利便施設の立地を許容する地域です。マンションやアパートはもちろん、中規模までの店舗や事務所も建設可能なため、投資の選択肢が広がります。絶対高さ制限がなくなるだけでなく、北側斜線規制もなくなるため、各種の住居専門地域と比較すると、密集した住宅を建設できます。また、床面積3,000㎡までの店舗等やホテル・旅館・ボウリング場・スケート場・水泳場・ゴルフ練習場・バッティング練習場などの遊戯施設も建設可能です。
特に、住宅需要と商業需要の両方を見込める立地では、複合的な収益構造を構築できる可能性があります。ただし、工場や風俗施設など、住環境に影響を与える可能性のある用途は制限されています。
⑥第二種住居地域

第二種住居地域では、住居の環境を保護しながらも、より幅広い商業施設やサービス施設の立地が認められています。店舗等は床面積10,000㎡まで、事務所等は床面積3,000㎡まで建設可能であり、第一種住居地域とは異なりカラオケボックス・麻雀店・パチンコ店などの建設も可能になります。映画館や劇場などの建設は禁止されているものの遊戯施設や風俗営業施設の一部も建設可能で、都市の利便性を重視した土地利用が想定されています。
投資的な観点からは、住宅需要に加えて、娯楽施設や商業施設としての活用も視野に入れることができ、立地条件に応じて多様な収益機会を見出すことが可能です。
⑦準住居地域

準住居地域は、主要な道路の沿道において、住居と自動車関連施設が共存できるように設定された地域です。車庫・倉庫・自動車修理工場やガソリンスタンド、さらに小規模であれば劇場・映画館・演芸場・観覧場などの建設が可能で、交通の利便性を活かした土地利用が期待できます。
不動産投資では、住宅需要に加えて、国道や幹線道路の沿道に当たるため自動車関連ビジネスのテナントニーズも見込まれるため、立地特性を活かした戦略的な投資が可能です。
⑧田園地域

田園住居地域は、2018年4月の法改正で新設された用途地域です。良好な居住環境と農地の保全を両立させることを目的としており、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護します。そのため、農地の造成や農地の用途変更の際、市町村の許可が必要です。また、住宅については第一種・第二種低層住居専門地域と同様の規制となっており、高さ10mまたは12mまでの住宅のみ建設可能です。店舗は日用品販売店舗(コンビニエンスストア)・喫茶店・理髪店などに限られますが、農産物直売所や農家レストラン、農産物や農薬などを貯蔵する倉庫、農産物の生産・集荷・処理する工場も建設できることが特徴です。
不動産投資の観点からは、都市農地を活かした特色ある開発や、農業関連施設との連携による新しいビジネスモデルの可能性を探ることができます。
⑨近隣商業地域

近隣商業地域は、地域の住民が日常的に利用する商業施設やサービス施設の集積を図る地域です。住宅との共存も認められており、中小規模の店舗やオフィスビルが立ち並ぶエリアとなっています。近隣商業地域では、基本的に建築できる建物の種類に制限がありません。また、道路斜線規制や隣地規制についても。住居系の用途地域と比較すると緩やかになっています。
不動産投資の観点では、商業テナントの需要が見込めるうえ、住宅需要も期待できることから、用途の転換や複合開発など、柔軟な投資戦略を立てやすい特徴があります。特に駅前や主要道路沿いでは、安定した収益が期待できます。
⑩商業地域

商業地域は、都市の中心部に位置し、商業・業務機能の集積を図る地域です。建築制限が最も緩く、高層ビルの建設も可能で、容積率も最大1300%まで認められています。
不動産投資においては、高い収益性が期待できる一方で、初期投資額も大きくなりやすい特徴があります。立地条件によっては、オフィス、商業、住宅等の複合開発による相乗効果も期待でき、都市型投資の代表的な対象エリアとなっています。
⑪準工業地域

準工業地域は、環境悪化の恐れが比較的少ない工業の利便を図る地域です。住宅や商業施設との混在を許容し、多様な土地利用が可能な地域となっています。準工業地域では個室付き浴場を除いて、商業地域で建設可能な建物がすべて建築できます。
不動産投資では、工場跡地の再開発や物流施設への転換など、地域の変化に応じた柔軟な投資戦略を立てることができます。特に、都市部に近い準工業地域では、用途転換による価値向上の可能性もあります。
⑫工業地域

工業地域は、主として工業の利便を増進するために定められた地域です。環境を悪化させるおそれがある工場や危険物の貯蔵、処理の量が多い施設の建設が認められており、大規模な工場や倉庫等の施設の建設に制限がありません。しかし、床面積10,000㎡超の店舗等・ホテルや旅館・劇場等・キャバレーや個室付き浴場等・学校・病院の建設が認められておらず、住宅の新築は原則として制限されています。
不動産投資としては、工場や物流施設、データセンターなどの産業用不動産としての活用がメインとなります。近年は、Eコマースの発展に伴う物流施設需要の高まりを受けて、投資対象としての注目度が上昇しています。
⑬工業専用地域

工業専用地域は、最も純化された工業地域であり、住宅や商業施設などの建設が厳しく制限されています。大規模工場や危険性の高い施設の立地が可能で、工業に特化した土地利用を図る地域です。
不動産投資としては、特殊な産業用不動産や大規模な物流施設などが主な対象となります。周辺環境への配慮から、臨海部や工業団地内に指定されることが多く、長期的な産業用途での活用を前提とした投資戦略が求められます。
用途地域の調べ方
不動産投資をする際に、物件がどの用途地域にあるのか、どのような制限が課せられているのかを確認するときは、必ず正確な情報源からの確認を行いましょう。
最も信頼性の高い方法は、各自治体の建築局や都市計画課に直接問い合わせることです。これらの部署では、常に最新の都市計画情報を管理しており、特定の土地における用途制限や、その他法令による制限を詳しく把握しています。
近年では各自治体がウェブ上で都市計画情報を提供しているケースもあり、オンラインで簡単に確認することも可能です。
東京都新宿区を例に挙げると、『新宿区みんなのGIS』にて、住所・地図から都市計画情報を確認することができます。まずは検索エンジンで「(自治体名)都市計画マップ」と検索し、希望のエリアを確認してみましょう。
ただし、デジタル情報には法改正や規制変更が即座に反映されていないこともあるため、最終的には必ず行政窓口での確認を行うことをおすすめします。
