試食見学会で感動!「自宅売却&老人ホーム入居」を決断
娘たちに付き添われて、試食付き見学会に参加した木下さん。ホームに着くなり、その豪華な佇まいに驚いたといいます。「まるで高級ホテル……」と、これまでの老人ホームのイメージが180度変わりました。また試食会で出てきた食事は、広告で大々的にうたうだけあり、舌の肥えた木下さんを満足させるものだったといいます。
――こんな食事を毎日食べられるなんて……
問題は費用。見学にいったホームは、介護を必要としない人をメインターゲットとした施設で、いわゆる高級老人ホームとして紹介されている施設。入居一時金に2,000万円、月額費用は30万円~。年金月20万円ほどと、木下さん、かなりもらっているほうだと自負していますが、それでも月にプラス15万円ほど取り崩していく必要があります。
――自宅を売れば、なんとかなるか……
茂子さんと暮らした思い出の自宅を売ってしまうのは、どこか寂しいことではありましたが、今後の相続を考えると売ったほうが娘たちのため……そんなことを考えながら、最終的に老人ホームへの入居を決めたといいます。
人生最後の贅沢。心を躍らせながら、老人ホームでの新生活がスタートしました。しかし、初日から違和感を覚えます。盛り付けや食器は素晴らしかったものの、味が薄く、自分の好みとは異なっていたのです。翌日の朝食も薄味で、木下さんには物足りないものでした。昼食の懐石弁当は素材はよいものを使っていると思われましたが、旨味が感じられません。「試食会での料理はあんなに感動的だったのに…」と木下さんは思いました。
3日ほど我慢しましたが、食が進まず、娘たちに聞いたところ、普段の食事は健康を考慮して薄味にしているとのこと。見学時の料理は特別メニューだったと知り、「騙したな!」とついつい大声を出してしまったといいます。それに対して娘たちは「勘違いしたのはお父さんでしょ」と反論。試食会のメニューは、月1回、「季節の食を愉しむ」というイベント食を再現したもの。普段の食事については、食材にこだわりつつ健康を配慮した料理を提供しているときちんと説明がありました。テンションがあがった木下さんは、単に聞きそびれていただけだったのです。
それでも「完全に騙された」と後悔を口にする木下さん。思い切って入居を決めたのは、食の美味しさに感動したから。それであれば、高い費用を払う価値がある、と思っていました。こんな不満を抱えたままでいいのか……まだ悩み中だといいます。
ソニー生命保険株式会社が全国の50~79歳の男女を対象に行った『シニアの生活意識調査2024』によると、現在の楽しみとして最も多く挙がったのが「旅行」で45.3%。「テレビ/ドラマ」39.9%、「グルメ」28.1%、「映画」25.9%、「読書」22.3%、「スポーツ」20.8%、「音楽/楽器」20.7%と続きます。
昨今は、介護を必要としない人でも安心・安全な生活を求めて、老人ホームに入居する人が増えています。その際、これまでの楽しみを老人ホームでも得られると期待していることでしょう。車イス生活となり、これまでのように「美味しいものを求めて出かける」ということが難しくなり落胆していたところ、「料理自慢の老人ホーム」の存在に歓喜していた木下さん。勘違いだったといはいえ、落胆した姿は誰もがかわいそうになるほどだったといいます。
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