日本の持ち家率は60%ほど。平均40歳前後でマイホームを実現しています。現金一括で払える金額ではないので、多くが住宅ローンを活用しますが、そこに思わぬ落とし穴が潜んでいました。
住宅ローンなんて借りなきゃよかった…年収700万円・40歳サラリーマン、通勤片道1時間20分「埼玉の新築戸建て」にポツンとひとりきり「何かの間違いでは?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

マイホーム実現が元凶…夫婦仲が険悪に

このような決断から5年。高橋さん家族は、幸せな日々を送って――おかしなことに、自慢の広々とした家には高橋さん、ひとりだけ。実は、妻と2人の子どもはこの家を出ていき、先日、離婚が成立したというのです。

 

無理してでも幸せな家族を夢見たはずなのに……なぜ?

 

――無理して家を買ったからでしょう。返済負担が大きくて常に妻はイライラしていました。喧嘩も多くなって……

 

年収700万円だった高橋さん、月収は45万円。手取りにすると35万円ほどでした。そこから毎月のローン返済額を引くと残り22万円。家族4人、節約を心掛ければ十分生活できる金額ですが、元妻が思い描いた生活とは少々違ったようです。また通勤に往復3時間弱かかる高橋さんとは平日はほとんど会話がなく、土日の休みも疲れを取ることで精いっぱい。育児がワンオペ状態になっていたこともまた、今さらながらよくなかったといいます。

 

離婚原因はいわゆる「性格の不一致」。男女ともに最も多い理由で、約33%から37%の申立てがこの理由に該当します。そのきっかけとなったのが、家族の幸せを願って無理して実現したマイホームとは、何とも皮肉な話です。

 

――無理して住宅ローンなんて借りなければ、こんなことにならなかったのに……

――5年前の自分がこの状況をみたら驚くでしょうね。「離婚なんて、何かの間違いでは」と

 

自虐して力なく笑う高橋さん。通勤時間も長いので、マイホームは手放すことを検討しているとか。

 

離婚時に住宅ローンが残っている場合の対処法は、状況に応じていくつかの選択肢があります。売却を決断した際、売却価格がローン残債を上回るなら、売却益を使ってローンを完済できます。この場合、売却後の利益は財産分与の対象となります。一方で、売却価格がローン残債を下回る場合、売却してもローンを完済できないため、残ったローンは引き続き支払う必要があります。この場合、任意売却を検討することもできます。任意売却とは、金融機関の同意を得て、通常の市場価格よりも低い価格で物件を売却する方法です。

 

マイホームを実現してから5年。昨今の不動産市況を考えると、売却価格がローン残債を上回る可能性が高いでしょう。そうなると、前述の通り、財産分与を考慮しなければなりません。

 

――まったく納得できないのですが……仕方がないんですかね

 

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年人口動態統計』

法テラス『ローンが残っている住宅も、財産分与の対象とすることができるのですか。』