看取り可能=医師・看護師常駐とは限らない
自宅をきれいに処分し、終の棲家も見つかった。もう何も心配することはない……そう思っていた矢先、斉藤さんに思いもよらないことが起こります。老人ホームから退去せざるを得なくなったのです。
きっかけは、ホームに入居してから半年ほど経ったころ。誤嚥性肺炎により入院し、その後、たん吸引が必要な状態になったことをホームに伝えると、「たん吸引に対応できないから退去してほしい」といわれたといいます。
――えっ、最期まで暮らせると聞いたのに
まさか、退去勧告を受けると思わなかったという斉藤さん。退去しろといわれても、もう自宅は処分してしまったので自宅に戻ることはできません。90日間の猶予の期間中に、受け入れてくれるホームを探すしかないといいます。
厚生労働省の資料によると、住宅型有料老人ホームにおける看取りの受け入れについては、「積極的に推進している」が16.4%、「希望があれば」が59.6%、「原則的に対応していない」が21.0%でした。ただ看取りが可能といっても、退去要件に当てはまっていれば、退去勧告を受けることがあります。
具体的には「利用料を滞納したとき」「暴力・暴言で他の入居者に迷惑をかけるとき」「長期入院」「施設では対応できない医療行為が必要になったとき」といった状況になると、退去勧告を受けることが多いようです。
たん吸引は医療行為であり、看護師などの医療従事者か研修を受けた一部の介護職員しか処置ができません。昼は看護師等が在中していても夜は不在というホームでは、看取り可能とうたっていても退去勧告を受けることがあるでしょう。
そもそも看取りとは、清潔の保持や床ずれ防止などの身体的ケア、スタッフの訪室回数を増やすなどの精神的なケアといった、最期を迎えるまでの身の回りのケアのこと。医療行為とは異なるものです。また医療行為に対応できるホームであっても、急変時にしっかりと対応できるよう、医療施設への転院を勧められることもあります。
終の棲家だと思っていても、そこで最期を迎えられるかは難しい場合も。思わぬことで退去しなければならない場合もあるので、老人ホームに入居する際、自宅の売却のタイミングは熟考に熟考を重ねておきたいものです。
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