かつて住んでいた自宅から感じられる「父親の孤独」
警察庁によると、令和6年1~3月に自宅において死亡したひとり暮らしの人は2万1,716人。これは警察の取り扱いの35.9%にあたります。年齢別にみていくと高齢者が圧倒的に多く、65歳以上が全体の78.4%。75歳以上が54.1%を占めます(関連記事:『【ランキング】47都道府県「孤独死率」…令和6年上半期分暫定値』)。単身の高齢世帯が増加の一途を辿るなか、孤独死とされるケースも増加傾向にあるのです。
父方の親戚から、「自宅はそのままにしてあるから、遺品整理などをお願いしたい」という話がありました。相続人は清水さんと妹だけだから、勝手に自分たちでやるのはトラブルの元だろうと思ったのでしょう。清水さんと妹は、実に30年ぶりに生まれ育った家を訪れることになったといいます。
家を出てからに30年経っているので、記憶のなかよりもずいぶんとボロボロになっていましたが、それでも当時の面影を残していることにテンションが上がったとか。しかし、そんな気持ちは家のなかに入ってすぐに引いてしまったといいます。
築50年近い家のなかは、外観以上に荒れ果て、朽ちていました。父親は基本的にリビングとその横の和室だけ使っていたのでしょう、不要なものであふれていて物置のよう。「よく、こんなにモノであふれているなか暮らしていたね……」とため息をついてしまうほどのありさまです。一方で、2階にあった清水さんの部屋、妹の部屋、そして両親の寝室は、当時のまま。ただ荷物だけがなくなっている状態。ここで父親は何を思っていたのでしょうか。
また衝撃的だったのは水回り。周囲にはカビが広がり、思わずゾワッとするような状態。取れずに固まった汚れがそのままになっていて、思わず「ひー」と声をあげてしまうほどです。
自分たちでできることから……と、まずは、ゴミとそうではないモノとに分別していきます。その過程でみつけた一冊の銀行通帳。偶数付きの15日、年金の支給日に必ず記帳をしていたようです。2ヵ月で13万6,000円。1ヵ月6万8,000円。個人事業主だった父親が受け取れる年金は基礎年金だけ。親戚の話では父親はそれだけのお金で毎月暮らしていたといいます。「ローンは返し終わってるし。節約した生活なら、何ら不自由はない」といっていたとか。それでも月7万円弱……老後を満喫するには少なすぎます。
そして散らかったテーブルの上でみつけたのは、懐かしい家族写真。家族4人での思い出です。
――いつの時代の写真を飾っているのよ、お父さん
もう亡くなっていて、心情を記したものも特にみつからず、実際に何を考えていたのかはわかりません。しかし、何の手入れもせず、荒れ果て、散らかり放題のかつての生まれ育った家からは、どれほど父親が孤独に生きていたのか、痛いくらいに感じるものでした。
両親が離婚し、母親と暮らしていたので、その絆はさらに深まりましたが、父親とはどんどん疎遠になっていったという清水さん。一方で、父親はいつまでも娘たちを思っていたのでしょう。すぐに見えるところにあった家族写真から、父親の想いがはっきりと感じ取ることができました。1人、孤独に暮らしていただろう父親に何かしてあげられなかったのか……そう考えると、後悔の念で涙が止まらなかったといいます。
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