最期をどこで迎えたいか。「慣れ親しんだ自宅で」という考えの人もいれば、「設備の整った施設で」と考える人もいます。しかし、「親の家」は家族間でトラブルの原因となることも少なくありません。本記事では、Aさん夫婦の事例とともに親の終の棲家について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
老後の安心がお金で買えるなら…持病がある妻のため、年金月20万円の70代元共働き夫婦「高級老人ホーム」入居を計画も…40代息子夫婦と大揉め。家族崩壊の理由【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

親の財産は誰のもの?…親子で考えるためのヒント

「親の家」をめぐるトラブルのきっかけ

親が築き上げた財産、とりわけ「家」は、しばしば家族間でのトラブルの原因となります。その背景には、親と子供たちのあいだで「家に対する価値観の違い」が一つとして挙げられます。

 

親にとっての家

親にとって、家は人生をともに歩んできた大切な場所であり、思い出が詰まった財産です。また、老後の生活を支える資金として活用する選択肢も考えています。

 

子供にとっての家

一方、子供にとっては、人生を共に歩んできた場所でありながら、「親から受け継ぐもの」という考えがある場合があります。特に長男や長女が「家は自分が継ぐものだ」と考えているケースでは、親が家を売却しようとすると反発が生じやすいです。

 

実際、親が家を売却して老後資金に充てようとしたことで、子供たちが「私たちになにも相談せずに決めた」と不満を持ち、家族間のトラブルに発展するケースは少なくありません。

 

老後の資金計画に家族との話し合いは必須

こうしたトラブルを防ぐためには、老後の資金計画について家族全員で事前に話し合うことが重要です。親がどのような生活を望んでいるのか、子供たちがどのような期待を持っているのかを共有することで、お互いの認識をすり合わせることができます。

 

以下は、話し合いを円滑に進めるためのポイントです。

 

1.親の意思を明確にする
親が老後にどのような生活を送りたいのかを具体的に話してもらいます。たとえば、「高齢者施設に入りたい」「家に住み続けながらヘルパーの支援を受けたい」など、希望を明確にすることが大切です。
 

2.資金計画を可視化する
年金収入、貯蓄、退職金など、どのくらいの資金があり、どのくらい必要になるのかを家族全員で共有します。不足分をどのように補うか(たとえば家の売却など)についても話し合いが必要です。
 

3.家族全員の意見を尊重する
親の希望を優先することは大切ですが、子供たちの意見や感情にも配慮する必要があります。全員が納得できる妥協点を見つけることが、円満な解決につながります。  

 

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表