老後の生活に欠かせない存在の「公的年金」。しかし、夫婦のどちらかが亡くなった際、年金収入がどれくらい減るか把握しているという人は多くないかもしれません。特に自営業を営む夫婦の場合、注意が必要であると、ファイナンシャルプランナーの山﨑裕佳子氏はいいます。山下さん(仮名)の事例をもとに、突如生活が困窮する「落とし穴」と、困窮した場合の「最後の手段」についてみていきましょう。
骨と皮だけ…「年金月5万円」で暮らす78歳母の変わり果てた姿に、住宅ローンと教育費に追われる「年収450万円」47歳長男がくだした〈究極の決断〉【FPの助言】
生活保護の対象になる…FPから受けた「思わぬ助言」
早速、FPに母と自分の家計状況を相談。するとFPから、「お母様のようなケースですと、生活保護の対象になるかもしれません」と助言を受けます。
「生活保護」にネガティブなイメージを持っていたタケオさんは戸惑いましたが、「背に腹は代えられない」と、生活保護の申請を決断。後日、母を連れて山梨県の地元地域を管轄する福祉事務所に出向きました。
生活保護を受けるための「要件」は?
厚生労働省のHPによると、生活保護を受給するための要件は、下記のようになっています※。
■保護の要件等
生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。
<出典>
・厚生労働省HP「生活保護制度」
具体的には、
・預貯金や生活に利用していない土地や家屋等がある場合には売却して生活費に充てる
・世帯のなかに働くことが可能な人がいれば、能力に応じて働き、収入を得て生活費に充てる
・年金や手当など社会保障制度から別の給付が受けられる場合は、生活保護よりも優先してそちらの給付を受ける
・親族等から金銭的援助が受けられる場合は、保護費に優先して援助を受ける
というのが条件となっており、これらをすべて活用してもなお、収入が厚生労働大臣の定める最低生活費の基準に満たない場合、その不足額が保護費として支給されます。
トキコさんは現在単身世帯にあたり、資産といえるものは住んでいる古家が建っている土地と、少ない年金からコツコツ貯めた預金の15万円のみです。
また、扶養義務者である息子のタケオさんも、自分たちの生活に手いっぱいで援助をする余裕がない、ということが認められ、審査の結果トキコさんへの保護費の支給が決定しました。
困ったら1人で抱え込まず、行政や専門家へ相談を
トキコさんの経済状態は、夫に先立たれたことで一気に悪化してしまいました。自営業者の妻には会社員の妻のような遺族年金がないため、配偶者が亡くなると年金額が半減してしまうのです。
預貯金や私的年金などで補填できれば問題ないのでしょうが、トキコさんには預貯金といえるほどの資金はなく、また公的年金以外に収入がなかったために厳しい生活を強いられてしまいました。
「親の年金はいくらなのか?」「預貯金や資産といえるものがあるか?」……子どもから親に聞くのは気が引けるかもしれませんが、いざというときに慌てないために、親の資産の把握は非常に重要です。
また、もしも家族で解決できないことに直面した際には、抱え込まずに行政や専門家の助言を仰ぐことを検討しましょう。
山﨑 裕佳子
ファイナンシャル・プランナー