もっとも簡単なのは、間違いや失敗を認めて人に伝えること

「間違ってはいけない」「失敗してはいけない」と思えば思うほど、パニックに陥って冷静な判断ができなくなり、本来の「正しさ」からはほど遠い方策をとってしまいがちです。結果的に、それが事態を大きく悪化させることにつながってしまうのです。

ミスは「正しいこと」ではありませんが、「間違ってはいけない」「失敗してはいけない」と思い込みすぎるあまりに、それより本質的な「正しいこと」から逃れてしまうのは、本末転倒と言えるでしょう。

このタイプの人に必要なのは、まず「間違ってしまった」「失敗してしまった」と認めることです。もっとも簡単な認め方は、間違いや失敗を人に伝えることです。取引先を怒らせてしまったら、「取引先の人を怒らせてしまいました」と上司に報告します。プレゼンに必要な資料を忘れたら、相手に「忘れました。すみません」と言います。

人は、言葉にして初めてその事実を認めることができる側面があります。その時点では、その後の展開や解決策は考えなくてもかまいません。まず、間違いや失敗を認めるのが第一です。じつはこれはリスクマネジメントの基本中の基本でもあるのです。

また、人に言うことには、別の効果もあります。他人が助けてくれたり、あるいは「こうすればいいのでは」と、違う解決策を示してくれたりすることもあるのです。

問題に振りまわされて周囲が見えていない状態では、決して思い浮かばないような、しかし案外簡単な解決策は、意外と身近なところにあるものです。

和田 秀樹

国際医療福祉大学 教授
ヒデキ・ワダ・インスティテュート 代表
一橋大学国際公共政策大学院 特任教授
川崎幸病院精神科 顧問