夫(妻)が定年になったタイミングで離婚する「定年離婚」。退職金も入るため、それを財産分与することにより、夫婦の離婚後の生活もある程度維持できると見越しています。「第二の人生は自分の自由に歩みたい」と希望して離婚に踏み切るパターンです。本記事では、Aさんの事例とともに昨今増える定年離婚について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
〈退職金2,000万円・年金月20万円見込み〉達成感を胸に定年した60歳夫との「熟年離婚」を決めたパート妻…原因は「夫そっくりな実家暮らしの27歳息子の挙動」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

妻が離婚を決意した理由

Aさんの奥さんは次のように言います。

 

「昔から夫は家事も育児も手伝ってくれなかったし、私の外出にもいい顔はしなかった。ですが、私たちの世代の男性はそんなものだ、と諦めることもできました。でも……。主人と息子と3人で食事をするでしょう。息子が主人そっくりなんですよ。父親は新聞を読みながら、息子はスマホを見ながら、私が作った食事にはまともに目もくれないで、ただ食べ続けるんですよ。美味しいとか不味いとかもいわず、私が話しかけても2人ともうるさがってまともに聞いてくれないんです。1人で食事するよりも寂しいんです。

 

なんだか情けなくて、ずっと前から2人から離れて1人で気楽になりたかったんです。主人は定年退職で自由になれるつもりだったんでしょうが、私は余計自由がなくなってますます窮屈になってしまうという怖れが沸き上がってきてしまったんです。『そんな理由で?』という人もいるでしょうが、これは経験した人間でなければわからないのではないでしょうか? こういうのも『性格の不一致』になるんでしょうかね」

 

筆者はいつから具体的に離婚を考えだしたのか尋ねてみました。すると、

 

「夫の退職金は2,000万円で、年金の見込額は20万円ということがわかったんです。決定的だったのが、実父が2年前に亡くなって、決して多くはありませんがまとまったお金を相続したことです。それまでは漠然と(離婚したいなと)は思っていましたが、お金の問題が解決できそうになったので一気に現実化してきました。夫には反対されましたが、働き始めたのもそのころからです。最近は仕事も慣れてきたし、これからはできるだけ長く働いて1人でもしっかり生きていきたいと思っています」とおっしゃっていました。

 

彼女の目はキラキラして、なんだか以前お会いしたときよりも若くなったような印象を受けました。

 

〈参照〉

※厚生労働省 令和4年度 離婚に関する統計の概況 人口動態統計特殊報告

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/rikon22/dl/suii.pdf

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表