近年、増加傾向にある熟年離婚。もっとも、専業主婦の場合は夫の収入に依存しているケースも多く、我慢を強いられている人も少なくありません。そこで、将来的な離婚のため入念に準備をした結果、無事にモラハラ夫との離婚を果たしたAさんの事例をもとに、夫婦仲の善し悪しにかかわらず知っておきたい“お金のはなし”をみていきましょう。石川亜希子FPが解説します。
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お前ひとりでどうやって生きていくんだ、ん?…年収1,200万円の59歳“モラハラ”夫、7歳年下の専業主婦妻からの「離婚宣告」に余裕の高笑い→妻の“秘策”に一転、泣きながら謝罪のワケ【FPの助言】
利用しない手はない…Aさんが調べた“夫婦のお金”の分け方
「彼女は自分と似たような状況だったのに、そこから自分の力で人生を切り拓いている……それに比べて私は言い訳しているだけだ。このままの生活でいいのか? このまま何十年も同じ生活でいいのか?」
自問自答する日々を過ごしたAさんは、「とにかく自分も自立への準備をはじめよう」と決心しました。
Aさんは、将来的な離婚を見据えて、パート時間を増やしただけでなく、簿記の資格取得を目指して勉強を始めました。夫は帰りが遅いため、時間はあります。家事について、夫が指摘してくることもワンパターンであったため(掃除が行き届いていないと嫌みを言ってくるが、食卓にお惣菜が混ざっていてもあまり気がつかないなど)、手を抜けるところは抜いて、自分のための時間を増やしていきました。
同時に、財産分与についても調べはじめました。結婚期間中に2人で協力して増やした資産を公平に分配するという方法を、使わない手はありません。
機は熟した…Aさんが「離婚」を決意したタイミング
そして、12年後の現在……子どもが社会人となって家を出たことタイミングで、機は熟したと感じたAさん。
依然としてパートのままでしたが、猛勉強の末、簿記2級を取得したことで時給も上がり、コツコツ貯めた金額は400万円。貯めたお金で、有料の法律相談にも行きました。
夫は夢にも思っていないでしょうが、財産分与で得られる資産の大枠も計算していました。
まずは預貯金。夫は結婚するときまったく貯金がなかったため、今ある預貯金1,000万円は結婚してから築いたものになり、財産分与の対象です。Aさんの預貯金と合わせて半分に分けたとして、300万円ほどはAさんに分与されることになります。
退職金についても、賃金の後払いという性質から、将来的にほぼ確実に支給されることが見込まれる場合、財産分与の対象となります。夫の退職金は、満額で約2,000万円。支給前の退職金についての計算方法にもよりますが、400万円ほどはAさんに財産分与されることになりそうです。
そして、不動産。Aさんは、20年以上前に購入した建売住宅に暮らしています。住宅ローンは完済済みです。Aさんがこっそり査定を依頼したところ、20年以上経つとほぼ土地のみの価値となってしまいますが、2,000万円程度にはなりそうとのこと。購入時、Aさんの親が500万円を援助してくれていたので、その分も考慮し、1,000万円はAさんへの財産分与と主張できそうです。
さらに、年金分割制度があります。年金分割制度は、結婚期間中に支払った年金を夫婦で分割することです。分割されるのは「厚生年金」なので、配偶者が自営業など国民年金のみに加入しているような場合は対象外です。
Aさんは、年金事務所から「年金分割のための情報通知書」を取り寄せました。通知書には、年金分割の割合を決めるために必要な情報が記載されています。月4万円ほど年金を増やせる算段です。
そして、Aさんは夫のモラハラによる慰謝料も受け取りたいと考えています。ずっとつけていた日記が役に立つときがやってきました。
Aさんの秘策、それは入念な準備にほかなりません。