本当に「あなたのため」?教育虐待に注意
教育への過熱が教育虐待につながる
受験には、親のサポートが必要ですが、過熱する受験競争に、親のほうが熱心になりすぎて「教育虐待」につながるケースも増えています。教育虐待とは、子どもの教育に過干渉し、子どもの心身に悪影響を与える行為を指します。
子どもの許容量を超えた学習の強要、子どもの興味や適性を無視した進路決定、また成績がふるわないと罵倒したり。「一番でなければダメだ」「なぜ満点がとれなかった」と叱責するというケースもあります。
成人してからもうつに苦しむ人がいる
こうした親からの心理的虐待は、本人の自尊感情を著しく低下させます。皮肉なことに、学習意欲を低下させ、学力が低下していくこともあります。さらに、後からさまざまな問題を引き起こす恐れもあります。激しい暴力や暴言、万引きなどの非行、摂食症、不登校やひきこもりの引き金にもなりがちです。成人後も、うつなどに苦しみ続ける人もいます。
実際、小児期に言葉の暴力をくり返し受けると、脳の発達に悪影響を及ぼすことがわかっています。脳の効率的な情報伝達網を阻害し、知能や理解力の発達にダメージを与えます。
「どうせわからない」と思っていない?
親は子に、つい「あなたのため」と言ってしまいがちです。その言葉の裏には「どうせあなたにはわからないから、私の言うことを聞きなさい」という気持ちがありませんか? 意志を抑圧され、自我の芽を摘まれてしまうと、自己形成に影響を及ぼします。
親の理想を押しつけていないかふり返ってみましょう。
舩渡川智之
子どもこころ専門医・指導医