教育虐待は、子どもたちの心に深い傷跡を残すだけでなく、社会全体にも大きな影響を与えます。学力低下や社会適応の困難、精神疾患の発症など、教育虐待を受けた子どもたちはさまざまな問題を抱え、結果として生産性が低下する可能性が高まります。これは、社会全体の人的資本を減らし、経済成長を阻害する要因となりうるでしょう。また、医療費や社会保障費の増大にもつながり、経済的な負担を増やすことも。教育虐待は、子どもたちの未来だけでなく、社会全体の持続可能な発展を阻む深刻な問題です。本記事では、子どもこころ専門医・指導医である舩渡川智之氏監修の書籍『思春期の子の「うつ」がよくわかる本』(大和出版)より、教育虐待が子どもに与える影響について詳しく解説します。
振り返ればあれは教育虐待だった…「なぜできないの」「一番でなければダメだ」加熱する受験戦争、熱心な親に心を引き裂かれる子どもたちの悲鳴 (※写真はイメージです/PIXTA)

最近、子どもにどんな声掛けをしましたか?つい言ってしまうセリフが虐待に

つい子どもに言ってしまうセリフのなかに、本人を追い詰めてしまう言葉はないでしょうか。虐待は暴力やネグレクトだけではありません。親同士の口論、厳しすぎるしつけは、子どもの心を深く傷つける心理的虐待に当たります。日頃かけている言葉をチェックしてみましょう。

 

感情的

そのときの気分で態度を変え、自分の感情をそのままぶつける。怒りだけでなく、ポジティブな感情も含めて、コロコロ態度が変わると、子どもの情緒は安定しない。

 

感情表出の高い「高EE家族」

高EE(Expressed Emotion)とは、家族が精神疾患の患者さんに示す強い感情表出のこと。統合失調症の研究から始まり、感情的な家族のいる環境で再発リスクが高まることがわかっています。ほかの精神疾患でも関係性や病状を悪化させることがあります。

 

批判的&否定的

べき思考で、子どもに命令し、ほかの選択肢を与えない。「どうして」「なぜ」とできないことを理詰めで問いかけ、本人を追い詰めてしまう。

 

見下し

子どもを見下し、自分よりも下の存在として扱い、やる気をそぐ。

 

決めつけ

子どものしていることをよく見ずに決めつけるような言動は、自己肯定感を低下させ無力感を増大させる。

 

きょうだいとの比較

きょうだいとを比較し、蔑むような言葉は、劣等感を助長させ、本人の個性を親が否定することになる。

 

過度な期待

子どもにプレッシャーを与え、過度な努力を強いたりすると、挑戦を避けるようになる。

 

いらだち

イライラした口調で、お仕着せがましい態度で問題を指摘すると、子どものモチベーションが低下。罪悪感を覚えるようになることも。