年収が比較的多くても、貯蓄することに無頓着な人は一定数います。本人の仕事に対する姿勢や子どもの将来への期待などから、浪費をしているつもりがなくてもお金が貯まらないというケースもあるでしょう。本記事で加藤哲也さん(仮名)の事例とともに、FP dream代表FPの藤原洋子氏が、将来生活設計の注意点について解説します。
もっと早く買っておけば…年収1,100万円・大手食品メーカー会社員、パート妻に泣きつかれ49歳で渋々マイホーム購入も、80歳で後悔する「戦慄の住宅ローン返済額」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸住宅と持ち家の違い 

賃貸住宅と持ち家の違いを見てみましょう。それぞれにどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

 

賃貸のメリット・デメリット

〈メリット〉

・気軽に引っ越しができる

・建物・設備の修理費用などが不要

・購入時にかかる不動産税、登録免許税、印紙税が不要で初期費用が安価

・固定資産税、都市計画税が不要

・年収の変化に合わせて家賃を調整しやすい

 

〈デメリット〉

・内装や間取り、設備などをリフォームできない

・家賃の支払いが続き資産としての価値がない

・退職後や高齢になったとき賃貸契約を断られることがある

 

持ち家のメリット・デメリット

〈メリット〉

・内装や設備などのグレードが比較的高い

・ファミリー向けの物件が充実している

・リフォームできる

・資産として残る

・住宅ローンを完済したあとは老後の住宅費が軽減され、安心して暮らせる

 

〈デメリット〉

・賃貸住宅より簡単に引っ越すことができない

・毎年、固定資産税、都市計画税がかかる

・設備の交換などメンテナンス費用がかかる

・収入が減っても住居費を調整しにくい

 

立地や広さなど住環境が同じ程度なら、賃貸住宅と持ち家の50年間の住居にかかる総額は、大きく変わらないという試算があります。賃貸住宅と持ち家の大きな相違点は、購入した家は、「資産として残る」ことです。

加藤さんの現在

住宅購入を検討し始めたころの加藤さんの年収と貯蓄は以下のとおりです。

 

世帯年収:1,200万円(加藤さん1,100万円 妻100万円)

個人年金保険:65歳から10年間の確定年金 受取総額1,000万円

終身保険:保障額500万円

定期預金:150万円

生命保険:死亡保障2,000万円

医療保険:日額1万円

 

住みやすさを重視した賃貸住宅の家賃等と2人の子ども達の教育費や習い事、塾代などで、年収と比較して貯蓄は少なめです。個人年金保険、終身保険は、60歳まで保険料の支払いが続きます。住宅購入のための頭金にできるお金はありませんでした。

 

また、住宅ローンを組む際に、80歳までとすると年々契約期間が短くなり、購入額によっては、月々の支払額は大きくなってしまいます。「購入するならなるべく早く」という状況です。第一希望のマンションを購入すると、加藤さんの場合の月々の返済額は約20万円。これにボーナス払いがプラスされます。住宅ローンを組むなら、購入額を抑えて住宅ローンの負担を小さくし、繰上げ返済を行いながら、将来の返済額を少しでも減らすことが必要なのではないかとお伝えしました。

 

賃貸マンション内には、同時期に入居した人は年々減り、最近は、小さな子を連れた家族を多く見かけるようになっていました。いままで住みやすい住宅を選んできましたが、今回は払える金額が限られています。購入後は、いままで必要のなかった、税金や住宅のメンテナンス費用もかかるでしょう。

 

翌年、加藤さんは会社への貢献が評価され役員に昇格することが決まりました。定年になる65歳までは、役員報酬を受け取ることができるそうです。少し気持ちが楽になられたかもしれません、加藤さんは、しばらくして現在のお住まいである、第一希望だった中古一戸建てを購入しました。住み心地は思っていたより快適で、こんなことなら早く買っておけばよかった、と後悔の念も出てきたくらいだそうです。

 

ご自身やご家族のマネープラン、ライフプランを考えるにあたり、加藤さんは住宅取得がきっかけになりました。ご家族ごとにさまざまな状況がありますので遅いということはありませんし、また、事情が変わったらその都度考えなおすことも大切です。加藤さんご夫婦は、これからも協力してお金の管理をされることを願っています。

 

<参考>

※ suumo 50年間の “住居費“はどっちが得?

https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/sumai_nyumon/hikaku/140730_1/#map


 

藤原 洋子

FP dream

代表FP