悠々自適の老後のはずが、父親の異変で状況は一変

早田慎介さん(65歳)は長年大手企業の社員として働き、定年退職を迎えました。退職金と合わせて4,000万円の資産を保有し、妻の昭代さん(67歳)と合計で月々25万円程度の年金を受給。週末には夫婦で旅行を楽しみ、趣味を楽しみ、外食を楽しみ……そんな穏やかで優雅な日々を送ることができるはずでした。

しかし、そんなある日、早田さんの父の認知症が発覚しました。早田さんは父との仲が良くなく、長らく顔を合わせていませんでした。しかし、90代で高齢である両親の健康状態を考えると、介護の問題がいつかは訪れるかもしれないという不安は常に心のなかにあり、それがついに現実のものとなったのです。

父は認知症である以外は健康で身体は元気なので、家の中を縦横無尽に動き回ります。さらに、目を離すと外に出てしまい、近所の人に家まで連れてきてもらうこともしばしばでした。常に誰かが近くで見守っていないとならないような状態です。できるだけ母の負担を減らそうと特別養護老人ホーム(特養)への入所を希望しましたが、特養は希望者が多く、両親の介護状態ではすぐに入れる見込みがありません。

しかも、両親の貯金はほとんど残っておらず、年金もわずかな額しかないことが発覚。介護資金どころか生活費を賄うことすらも不安がある状態でした。年老いた母に負担が掛からないようにと思いましたが、現状ではグループホームなどへの入居も難しい状況です。

かといって、折り合いの悪い父を自分が面倒見ることも難しい状態です。そんなことをすれば自分が精神的に参ってしまい、共倒れになると思ったからです。また、実家は東北の田舎町にあり、関東に住む自分たちの生活を守りたい気持ちも強くありました。

そこで早田さんは、ひとまず母に父と一緒に暮らしてもらいながら、日中は父をデイサービスに通わせて負担を軽くしようと考えました。