妻から告げられた一言で崩れ去った、理想の老後

佐藤史郎さん(仮名・65歳)は長年勤務した会社を退職しました。現役時代は大手ハウスメーカーに勤務し、セールスマンとしての業績はまずまずで、年収は1,000万円。退職金も2,000万円程度を受け取っていました。

個人年金保険を合わせると3,000万円もの資産があり、公的年金は、同じ年の妻の分と合わせて月30万円程度。客観的に見てもかなり恵まれた資産状況で、佐藤さん自身も「老後資金の心配はない」と思っていました。

悠々自適の老後を楽しみにしていた佐藤さんでしたが、想像もしなかったことが起きてしまいます。退職から数日して、突然妻の晴美さんから離婚を切り出されたのです。

「ずっと考えていたことです。知らなかったのはあなただけ。じゃ、さよなら」

おとなしい性格の晴美さんが内心離婚を考えていたことにまったく気づいていなかった佐藤さんは、驚いて言葉も出ません。しかし、晴美さんは子どもたちが独立した頃から着々と準備を進め、退職を迎えたときに離婚しようと決めていました。

というのも、佐藤さんは典型的な「昭和の男」で、家事は一切自分ではできず、晴美さんがいないとご飯を炊くことすらできません。そのうえ、家事や子育てを一手に引き受けていた晴美さんに対して家政婦のような扱いを続け、感謝の言葉ひとつありませんでした。

そんな毎日では嫌になるのも当然といえるでしょう。晴美さんは佐藤さんに内緒でエアコンクリーニングの仕事を始めていました。ほとんどコストのかからない仕事で、離婚する頃には年間で300万円近くの収入を確保することができていました。

晴美さんは子どもたちに以前から離婚の意思を伝えていましたが、反対どころか応援してくれています。佐藤さんの知らぬところで、晴美さんは自立して生活していける基盤を手に入れていたのでした。

こうして晴美さんが家を出て行ってから数日後、佐藤さんのもとに晴美さんの弁護士から離婚協議についての文書が届きました。これを見た佐藤さんは、さらに驚愕することになるのです。