何歳になっても悩まされるのが「人間関係」です。例えば、相手に嫌われているかもしれないと思ったときに、相手は変えられないから自分が変わるというのも確かに1つの方法でしょう。しかし、精神科医の保坂隆氏は、それとは別の方法で自分を守るのも一案だといいます。今回は保坂氏の著書『精神科医が教える60歳からの人生を楽しむ忘れる力』(大和書房)から、人間関係で疲弊しないための心の持ちようをご紹介します。
過去の成功をいつまでも自慢する「うっとうしい人」になっていませんか?“前向きなシニア”になるための心得【精神科医の助言】
昔の成功を忘れられず、引きずって生きてしまう人
自分の失敗を忘れられないこともありますが、自分の成功を忘れられず、引きずって生きていることはありませんか。
80代、90代の方が「オレは駆けっこでいつも1位だった」と自慢しているぶんには、まわりも「はいはい、おじいちゃんはすごいよね」とやり過ごしてくれますが、中高年ぐらいの自慢は、ときに人から引かれることがあります。
たしかに、「営業で売上1位だった」「仕事でよく海外へ行っていた」「大学で最優秀賞をとった」「小学生のとき、足が速かった」。それぞれが申し分のない思い出です。自分の成功体験をもっていることは、自己肯定感を保つために重要なこと。しかし、自分の成功体験は他人の役には立たないことが多いのです。うっとうしがられるだけです。
ときどき自分のお子さんにこう言ってしまう人がいます。「お母さんは英語なんかいつも一番だったのに、あなたはなんで、こんな問題ができないの」。親は子どもには自慢しやすいのです。ただ、お子さんには「親の話は半分に聞いておきなさい」とアドバイスしたいと思います。人間は自分の記憶を、都合よく脚色して記憶している場合が多いからです。
営業成績が一番だったとき、たまたま友人の伝手で大量に買ってくれる人がいたのが理由だったのですが、なんだか自分がすごく努力して才能を発揮したという記憶になっていたりします。成功体験には少し怪しいところがあります。