子どもが巣立ち、あとは夫婦2人で長い老後をどう生きていくか考えるだけ。そう思って老後資金の計画を立てたものの、想定外の事態が発生しその計画が崩れてしまった……。こんなケースは少なくありません。長寿化が進む日本では、自分の年金生活と親の介護生活が同時に訪れることも想定しておかなければなりません。今回は、年金繰下げを決めて「老後は安泰」と安心していた佐藤さん夫婦に訪れた危機を例に、南真理FPがアドバイスを交えて解説します。
このままじゃ親子共倒れだ…。65歳元会社員、“年金増額計画”で余裕の老後を確信も、状況を一変させた「老母からの電話」【FPの助言】
家族同士のコミュニケーションが不安解消のカギ
佐藤さん夫婦は、今まで後回しにしていた今後のことを母親と話し合い、介護について具体的な計画を立てることができました。
「年齢の割にはしっかりしていたとはいえ、もっと早く母と話し合うべきだったんですよね……。今回話し合って、母の介護は私の自宅ですることにして、母の家を売却することにしました。長年父と暮らした家なので寂しそうでしたが、現実問題としてお金が必要なので了承してくれましたよ。立地も悪くないので売却資金が2,000万円くらいになって、母の年金と合わせれば介護資金も工面できそうです。それと介護は夫婦交代で、介護サービスも使って、無理のない範囲で仕事もすることにしました。お金のためだけじゃなくて気分転換したいですしね。自分たちの老後資金はやっぱり心配なので、節約も頑張りつつ、当初計画していた通り年金の繰り下げも70歳までしようと思っています」とのこと。
長い人生の中で、親の介護と自身の老後生活といったように、複数のライフイベントが重なることはよくあります。そのとき大切なことは、「優先順位」をつけることです。佐藤さん夫婦にとって、第一優先は自分たちの生活を守ることでした。次が母の介護という考えに至ったため、母の自宅を売却するという選択をされました。
今回の佐藤さんのケースでは、幸いにも介護費用と老後資金ともに準備できそうですが、もっと早い段階で、親と介護について話し合っておけば、急いで自宅を売却する必要はなかったかもしれません。親とお金の話はしづらいかもしれませんが、家族で話し合い、お互いの状況を共有することが、不安を解消する上で重要です。
年金の繰下げは、老後資金を増やす有効な手段の1つですが、親の介護など予期せぬ出来事が起こる可能性も考慮して柔軟に対応できるように早めに計画を立てておくことが大切です。