子どもが巣立ち、あとは夫婦2人で長い老後をどう生きていくか考えるだけ。そう思って老後資金の計画を立てたものの、想定外の事態が発生しその計画が崩れてしまった……。こんなケースは少なくありません。長寿化が進む日本では、自分の年金生活と親の介護生活が同時に訪れることも想定しておかなければなりません。今回は、年金繰下げを決めて「老後は安泰」と安心していた佐藤さん夫婦に訪れた危機を例に、南真理FPがアドバイスを交えて解説します。
このままじゃ親子共倒れだ…。65歳元会社員、“年金増額計画”で余裕の老後を確信も、状況を一変させた「老母からの電話」【FPの助言】
年金の繰下げをした場合のライフプランは…
年金の繰下げは、65歳で年金を受け取らずに、66歳以後75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受け取ることができます。1ヵ月繰下げるごとに0.7%増額されるという仕組みです。
佐藤さん夫婦が年金を繰り下げて70歳から年金を受け取った場合、家計収支は以下のようになります。
【相談者プロフィール】
佐藤博さん(65歳):無職(元会社員)
佐藤典子さん(65歳):無職(夫の扶養内でパート勤務のみ)
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〈収入〉
70歳までの世帯収入合計:200万円(手取り年約180万円、月15万円)
佐藤さんパート収入:年100万円
妻典子さんパート収入:年100万円
70歳からの世帯の年金合計:334万円(手取り年約300万円、月25万円)
佐藤さん年金:218万円(年金170万円の42%増)
妻典子さん年金:116万円(年金81万円の42%増)
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〈支出〉
世帯の支出合計額:208万円
生活費(食費、日用品費、光熱費、通信費):年156万円
住居費:年8万円
保険料:年12万円
車両費:年22万円
娯楽費等:年10万円
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〈貯蓄〉
普通預金:500万円
年金を70歳まで繰り下げると、年金を受け取らない5年間(65歳から69歳)の総額で約150万円の赤字(※1)となりますが、貯蓄でまかなえる金額です。70歳からの年金受給額が繰下げにより42%(0.7%×60ヵ月)増額されるため、車の買い替え等を除いては、年約100万円(※2)の黒字家計となります。
このように「年金の繰下げ計画」を立てていた佐藤さん夫婦でしたが、前述の通り状況が変わってしまいました。
「介護で働けないなら年金繰下げをしてる場合じゃないし、介護費用もかかる。このままじゃ俺たちと母で共倒れになるぞ」
そう危機感を募らせながら、夫婦は今後の相談のため再びFPのもとを訪れました。
(※1)65歳から69歳のトータル収支 29万円×5年≒150万円
(※2) 70歳以降のトータル収支