長寿化によって、「いつかは自分も介護される側になるかもしれない」と漠然とした不安を感じる人は多いでしょう。しかし、実際そのための準備をしている人はどれだけいるでしょうか。本記事では、田中美咲さん(仮名)の事例とともに、FP dream代表FPの藤原洋子氏が介護への備えについて解説します。
下の世話、莫大な老人ホーム費用の請求…年収650万円の55歳公務員、同僚の“日常”に愕然。元気なうちにと開いた家族会議で27歳娘、涙ながら「私には無理」と本音【FPの解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

娘と真剣に自分たちの介護について話してみると…

美咲さんの職場にはその同僚のほかにも、親の介護に必要な費用を自分が一部負担している、という人もいました。「介護は本人だけの問題ではないのね」美咲さんは改めてそう思いました。

 

浩さんと美咲さんは、同居している次女に「お父さんやお母さんが年をとって、あなたのことが誰だかわからなくなったりしたら、どうする?」と切り出してみました。次女は、泣き出しそうになりながら「私には無理かも……」と言ったそうです。田中さん夫婦には、親の介護の経験はありませんでしたが、「そういうものかもしれないね」と納得したのでした。

 

子どもに負担をかけないようにするために

現在、田中さん夫婦の貯蓄は2,000万円あります。退職金は美咲さん2,000万円、浩さん1,200万円です。老齢年金は2人で月30万円ほど見込めますから、ゆとりのある老後を過ごせるように思えます。

 

しかし、田中さん夫婦は、孫が生まれれば、教育費の援助もしてあげたいし、子ども達にできるだけ多くの財産を遺してあげたいと考えていました。貯蓄と退職金の額からみると、いくら安心であるように思えても、将来どんなことが起こるかは誰にもわかりません。そのときに子ども達に経済的な負担をかけることがないように、自分達ができることはしておきたいというのが2人の想いです。

 

マイホームである戸建ての住宅ローンは、浩さんが65歳になるまで毎月11万円の支払いが続きます。契約者である浩さんが亡くなったり高度障害を負ったりした場合には、住宅ローンは、住宅購入時に加入した団体信用生命保険で残額が支払われます。しかし、それ以外の場合は、最後まで支払わなければなりません。浩さんが病気やケガをすると、治療費や生活費が上乗せでかかる可能性もあるでしょう。美咲さんの身になにか起こる可能性もあります。

 

美咲さんは、民間の介護保障について、どのような種類があるのか、どのような内容になっているのかを確認し加入を検討しようと、FPに相談してみることにしました。