内科医の橋本将吉氏は著書『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』で血管がいかに老化対策に必要かを説いています。一体どうしてでしょうか? その理由を著書から説明します。
血液ってどのようなものか、答えられますか?
血液は赤血球、白血球、血小板、血しょうという4つの要素で成り立っています。この4つは、血しょうと、残りの3つの血球という種類に分けられます。そして、血液の約55%を占める血しょうによって、食事で得られた栄養は運ばれていきます。残りの約45%のほとんどが血球です。
そして、血球の大部分が赤血球。赤血球の主な成分は鉄(ヘム)とタンパク質(グロビン)がくっついたヘモグロビンです。ちなみに、医師や看護師さん同士が、「ハーべー」なんて口にしているのを耳にしたことはありませんか? これはヘモグロビンの略称「Hb」をドイツ語読みしたものです。
このハーベーことヘモグロビンが赤いので、人の血は赤くなります。雑学になりますが、タコやイカの血が青く見えるのは、このヘモグロビンを持たないからです。このヘモグロビンが肺で酸素とくっついて、全身を巡ることで酸素が届けられるのです。では、なぜ酸素が必要なのか? 結論を言ってしまえば、エネルギーを得るために酸素が必要だからです。
人はもともと受精卵という1つの細胞で、これが次々に分裂していって最終的に約37兆個の細胞という生き物の塊になります。いわば、人は細胞の集まり、37兆個の細胞の合体ロボなのです。機械を動かすのに電気やガソリンが必要なように、細胞を機能させるにはエネルギーが必要です。そのエネルギーをつくるのに必要なのが酸素なのです。
細胞は、酸素を使って食べ物などから栄養素を摂取し、その栄養素からエネルギーを取り出しています。だから、赤血球は各細胞へ必死に酸素を送り届けているのです。その赤血球を含む血液の通り道が血管ですね。心臓が収縮すると血液が送り出されて、拡張すると血液を取り込みます。
心臓がドックンドックン脈打っているのは、収縮と拡張を繰り返して、血液を送り出したり、取り込んだりして流しているからです。そして、送り出された血液が通る血管が動脈、心臓に戻っていくときに通るのが静脈です。本来、動脈は心臓から送り出される血液の圧力に耐えられなければならないので、血管は弾力性があり丈夫にできているのです。
また、血液がスムーズに流れるように、血管の内壁はとてもすべすべで滑らかになっています。しかし、詳しくはあとで説明しますが、血管が加齢や生活習慣によって、デコボコで、硬くなっていく。これを動脈硬化と言います。
想像してみてください。すべすべで滑らかなところであれば、すーっと素早く移動できますが、デコボコのところだと、そんなに素早く移動できませんよね。血液の流れのことを血流と言いますが、血管という道の状態が悪化すれば、血流が悪くなり、栄養や酸素をうまく届けられなくなる。結果、細胞で構成されている臓器になんらかの支障がきたされることになるのです。
つまり、動脈硬化などが起き、血管が弱った状態になってしまうと、運ばれる栄養や酸素が少なくなったり滞ったりして、臓器がダメージを負ったり使えなくなってしまうというのは、容易に想像できるのではないでしょうか。年齢が上がってくると、どうしても血管を構成している細胞も年をとり、血管が硬くなりやすくなりますし、そもそもあまり食べられなくなり、栄養の摂取量が減ってしまいがちです。
酸素や栄養を運ぶ道が悪くて栄養が届けづらくなり、なおかつ入ってくる栄養が少なくなると、いっきに衰えてくるというわけです。つまり、老いても元気な人と、どんどん衰える人の大きな違いは、血管の状態であり、血流が大きく左右していると言っても過言ではないと私は考えています。