「愛しい娘と孫のためならなんでもしてあげたい」と、娘夫婦と仲睦まじい関係を続けてきた69歳のA夫婦。しかし、ひとり娘からの「とんでもないお願い」に仰天。牧野FP事務所の牧野寿和CFPは、A夫婦にどのような助言を行ったのでしょうか。みていきましょう。
パパ、実は相談があって…年金月24万円・69歳仲良し夫婦の“穏やかな老後”を奪い去った、愛する娘からの「まさかのひと言」【CFPの助言】
幼稚園から大学まで「私立」に通わせる場合の教育費
文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」によると、幼稚園3歳から高校3年生までの15年間、子ども1人当たりの学習費総額(保護者が子どもの学校教育および学校外活動のために支出した経費の総額)は次のようになっています。
また、文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果」によると、私立大学へ進んだ場合にかかる学費の平均は、次のようになっています。
・私立大学(学部)の授業料:93万0,943円
・入学料:24万5,951円
・初年度学生納付金(授業料、入学料、施設設備費の合計):135万7,080円
・実験実習料等を含めた初年度に納める総計:148万2,964円
■私立大学に4年間通った場合の学費総額……519万4,003円
つまり、Dくんが幼稚園からすべて私学に通うと、約2,357万円が必要となります。
別途、習い事や学習塾の月謝や、Cさんのいう“お付き合い”の費用も含めると、さらに毎年120万円以上かかりそうです。仮にこれらの半分を負担するとなると、出費はばかになりません。
A夫婦の援助は“非現実的”
A夫婦の資産は、自宅の土地と建物のみです。すでに住宅ローンは完済しており、Cさんが大学在学中に融資を受けた「国の教育ローン」も65歳までに完済していますが、退職金などでローン返済を賄ったこともあり、貯蓄は現在180万円ほどです。
65歳以降、年金収入の24万円のうち、毎月約22万円の支出で生活していることから、年間約30万円は貯蓄額が増えているそうですが、その額は微々たるものです。
よってA夫婦に、孫のDくんに援助する資金は到底ありません。無理に援助しようものなら、自分たちの生活が切迫してしまいます。
「Aさんたちにも、おそらくCさん夫婦にも、残念ながらお孫さんを私立に通わせる資金力はありません。幸いにもまだ受験準備を始めていないようですので、ここは娘さんに、率直に現状を話したほうがいいでしょう」と、筆者は心を鬼にして助言しました。