「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」(中央労働委員会)によると、令和4年度の定年退職者への平均退職金支給額は約1,878万円でした。退職金はまとまった金額が手元に入るタイミングですが、使い道を誤った結果、老後破産の危機に陥るケースも少なくありません。定年から1年後に“やらかしてしまった”元公務員Aさんの事例をもとに、詳しくみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
お父さんの年代がいちばん厄介なんだから…退職金2,500万円の61歳元公務員、年金受給前に欲をかいて大恥。頭によぎった元銀行員の娘の“ある忠告”【CFPの助言】
定年退職に浮かれる父…元銀行員の娘が“忠告”も
現在61歳のAさん(元公務員)と2歳年下の妻Bさん(パート勤務)は、都内の戸建て住宅で暮らしています。
およそ1年前、Aさんが定年退職したその週末、遠方に住む30歳のひとり娘(Cさん)夫婦がお祝いのため帰省して、みんなでディナーへ行ったときのことです。
食事会の最中、浮かれて酔っぱらうAさんに、
「お父さん……浮かれるのはいいけれど、老後のこともちゃんと考えてよね。お父さんくらいの年代の人たちが一番狙われるんだから。いきなりお金と時間ができていろんな判断基準が緩くなっているって思われているわよ、きっと。私も定年退職直後の人たちに営業行ったなあ」
と、Cさんが真剣に忠告しました。Cさんは結婚後、夫の転勤を機に転職するまで、銀行に勤めていたことから、浮かれているAさんのことが心配になったようです。
そして翌月、退職金2,500万円が振込まれたその日に、銀行から贈答品をもった営業担当者(Dさん)とその上司が、Aさん宅を訪ねてきました。
Dさんとその上司「このたびはご定年おめでとうございます!」
Aさんは「娘が言っていたのはこれか!」と驚くも、Cさんが以前勤めていた銀行であり、さらに話をしているとDさんとCさんが同期入社だったと判明。思わず昔話に花が咲きました。
その日はなにもなく帰っていきましたが、それからというもの定期的にDさんが家を訪れるようになり、その度、娘の銀行員時代の話などで盛り上がっていました。
そんなある日、Cさんから連絡が。
Cさん「やっぱり銀行からの営業はあった? 私の知っている人?」
Aさん「ああ、しかもDさんだよ、お前も知っているだろう」
Cさん「ああD君。いい人だけど……別にお付き合いで色々やらなくていいんだからね」
Cさんから改めてくぎを刺されたものの、すっかりDさんと意気投合していたAさんは、Cさんの忠告を話半分に聞き流してしまったそうです。
Cさんの連絡から数日後、いつものように訪ねてきたDさんはなにやら落ち込んでいるようでした。思わずAさんが「どうしたんだ?」と聞くと、「実は今月の数字が芳しくなくて……しばらく寄れそうにないです」とぼそっと答えました。
その話を聞いたAさんは、「それじゃあ俺が投資するから、次はおすすめの商品を教えてくれよ」と伝えたのです。
定年後、特段趣味もなく家にいることの多いAさん。一方、妻のBさんはパート勤めで家を空けることも多く、Aさんは暇を持て余していました。そのため、AさんはDさんとの談笑が日々の楽しみとなっていたことから、Dさんが今後も定期的に家に来られるよう、とっさにそこまで興味のなかった投資をはじめることにしたのでした。