ピーク時は年収1,000万円を稼いでいた60歳の武井惣一さん。現在は契約社員として用務員の仕事をこなしながら、「残業のつもりで」ドラッグストアでも働いているそうです。自己破産を経験し、心が折れそうになりながらも日々を懸命に生きる武井さんが語ってくれた「貧困のリアル」とは。ルポライター増田明利氏の著書『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)よりみていきます。
もうしんどい…年収1,000万円→いまは“働きづめ”で月収26万円。借金を返せず「自己破産」した60歳・非正規男性の嘆き【貧困の実態】
驚愕…60歳と58歳の武井夫妻が支払った医療費
1回の通院で病院の窓口に払う医療費は2,800円。調剤薬局で6週間分の薬を出してもらうと約5,700円も請求される。
「往復のバス代も加えたら、1回病院に行くと9,000円も出ていく。年間で9回ですから8万円超えるもの。そのうえ市販の風邪薬や鼻炎薬、胃薬、整腸剤、消炎鎮痛剤のぬり薬などで年間に8,000円ぐらい出ていくから嫌になる」
健康自慢だった奥さんも、この4年の間であちこちに不具合が出てきている。
「妻は53歳頃から子宮筋腫をやっちゃって。いくつかの治療を受けていたけど芳しくなく、筋腫だけを切除する手術を受けました。このときは3週間入院しましたね。これが引き金だったのか、その後もあちこち悪くなっている」
まず五十肩で左腕が痛くて上げられなくなり、ずっと湿布と痛み止めを服用しているそうだ。しかし、あまり効かないようで、3ヵ月前から2週間ごとに痛み止めの注射もするようになった。
「今まではなんともなかったのに、今年から花粉症になって耳鼻科通いもしたし。去年1年間に妻が医療機関の窓口で払ったのは約8万円ぐらいになります」
こんな塩梅なので2人合わせた医療費は18万円近い。収入がそう高くないのだから結構な金額だと思う。
「そのうえわたしは去年半ば頃から眼のかすみも出てきましてね。心配だったので眼科の先生に診てもらったら初期の白内障だということだった。そのとき老人性白内障と言われまして、ちょっと落ち込んじゃったよ」
今のところは点眼薬だけで対処しているが、いずれは人工水晶体を入れる手術が必要になると言われた。
「身体の衰えは切実に感じますよ。就寝中に両脚のふくらはぎがこむら返りになって飛び起きたことがあるし、昼の仕事中に耳の奥が痛くなり、その後も1時間ぐらい耳鳴りが止まらなかったことがある。妻も年に数回だけど肋骨の辺りに鈍痛が出て横になることがあるし。確実に老いているなあと悲しくなる」