ピーク時は年収1,000万円を稼いでいた60歳の武井惣一さん。現在は契約社員として用務員の仕事をこなしながら、「残業のつもりで」ドラッグストアでも働いているそうです。自己破産を経験し、心が折れそうになりながらも日々を懸命に生きる武井さんが語ってくれた「貧困のリアル」とは。ルポライター増田明利氏の著書『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)よりみていきます。
もうしんどい…年収1,000万円→いまは“働きづめ”で月収26万円。借金を返せず「自己破産」した60歳・非正規男性の嘆き【貧困の実態】
給料は東京都の最低賃金…1馬力では生活厳しく、共働きに
給料はというと、当然だが安い。賃金は日給制で1日8,400円。8時間労働なので時給にすると1,050円、東京都の最低賃金とほぼ同じという額。
「月に24日出勤だと約20万円。残業はあっても月7、8時間なので支給額は21万円ぐらいですね」
通勤のための交通費は出るが家族手当や住宅手当などは一切ない。世間がボーナスシーズンでも関係なし、寸志も出ない。退職金もない。
「まあ、仕事は楽だからね。裏口の通用門で受付をするのですが、来訪者は1時間で2人ぐらいです。天気の悪い日だと2時間で1人も来ないことがある。蛍光灯の点灯管を取り替えたり、トイレのペーパータオルを補充したりするのも仕事ですが、自分が経営者だったとしてもこの仕事だったら労賃は20万円がいいところだと思う」
支給額が約21万円だとすると手取りは17万円台の半ばぐらいか。夫婦2人だけとはいえ、これだけで生活していくのは至難の業だから終業後に副業に励んでいる。
「2つ目の職場は自宅最寄り駅周辺のアーケード街にあるドラッグストアです。本業は17時で終業なんです。なので残業のつもりでやることにしたんだ」
やることはレジ打ち、商品棚の補充、閉店後の後片付けなど。
「月火水金の4日は18時から21時30分までの3時間半。土曜日は正午から16時までの4時間働いているんです。こちらの時給は1,100円です」
先月は79時間働いたので8万6,900円の収入だった。本業の給料と合わせると使えるお金は26万円ほど。
「倒産の後始末がひと段落してから妻も働きに出るようになりまして。日本郵便の集配局で郵便物の仕分けやゆうメールの配達下準備などをやっています。彼女の月収が10万円ほどあるので助かっています」
家計を圧迫する「最大の出費」
2人の合計で使えるお金は35万円以上あるが生活は楽ではない。
「最大の出費は医療費です。わたしが60歳、妻が58歳。この年齢になるとあちこち悪くなって病院と縁が切れないんですよ。わたしは糖尿病持ちのうえ高血圧と高脂血症もあって6週間ごとに通院し、血液検査と尿検査をやっているんです」