80歳くらいがちょうどいい?

100歳の人は確実に増えていますが、調べてみるとみなさんはあまり100歳になりたくないと考えているようです。

広告代理店が元になっている「100年生活者研究所」というラボがあります。そこが2024年に発表したデータでは「100歳まで生きたいと思いますか?」というアンケートを行い、日本、アメリカ、中国、フィンランド、韓国、ドイツの6カ国の比較をしています(図表1)。

[図表1]100歳まで生きたいと思いますか?
[図表1]100歳まで生きたいと思いますか?

日本は「とてもそう思う」が6カ国中で最低の8.1%で、「そう思う」を加えても27.5%でした。6カ国の中ではアメリカが一番高く、「とてもそう思う」が31.2%あります。日本は一番100歳になる可能性が高いのに、なりたくないと思っている人が多いということになります。

同研究所では100歳になりたくない理由として、「みんなに迷惑をかけたくない」という気持ちを感じるかどうかも調査しています。すると、「強く感じる」という人が半数以上を占めていて、「感じる」を加えると9割近くになります。私たちも同じような調査をしていて、30歳から75歳の人に「何歳まで生きたいですか」と尋ねたところ、100歳以上と答えた人は1割弱でした。

「何歳まで生きたいか」ということで答えが最も多かったのは80歳です。さすがに70〜75歳の人は85歳が最多ですが、だいたい「80歳ぐらいでいいや」と思っている人が多いのでしょう。ちなみに2022年の「簡易生命表」(厚生労働省)によると、平均寿命は男性81歳、女性87歳です。

平均寿命は年齢が0歳の余命のことですから若くして亡くなっている人も含みます。見方を変えて、65歳の平均余命を見てみると、男性は19年、女性は24年。65歳に足すと男性は84歳、女性は89歳になります。この値を見ると100歳もそう遠くないことを感じさせてくれます。

[図表2]平均寿命を超える長寿の可能性
[図表2]平均寿命を超える長寿の可能性

図表2は「平均寿命を超える長寿の可能性」について経済産業省が示したものです。先の「SONIC研究」では、80歳前後の人に「100歳まで生きたいですか」と聞いて「はい」の割合は29%、「いいえ」は71%です。その理由は「寝たきりになりたくない」「人の世話になりたくない」というもので、健康だったら100歳でもいいけれど、という考えでした。

80歳の人でも100歳になりたくないと思っているというのはちょっと残念ですが、その理由もわからないではありません。たとえば介護保険の認定率(2015年)を見ると、90歳以上では男性の5割以上、女性の7割以上が要介護認定を受けています。このような状況では、100歳になりたくないとみなさんが思うことも理解できますね。